4カ月後に迫ったパリ五輪に向け、男子マラソンに出場する日本代表選手が内定した。そんな中、代表レース選考会の東京マラソン(3月3日)の結果を受けて波紋を呼んでいるのが、3人目の選手として選ばれた大迫傑の存在である。
大迫は4日、自身のYouTubeチャンネルでパリ五輪に「出場する予定」と明言したが、そもそも選考する側の日本陸上連盟・瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーは五輪に大迫が出場するかどうかについて「本人に聞いてくれ」というつれない返答をしていたのだ。4年に一度の五輪はマラソンランナーにとって晴れ舞台なのだが、大迫が五輪内定を“辞退”する可能性は十分あった。
大迫は東京マラソン前、内定していなかった。3日のレースでしっかり結果を出せば文句なしで五輪代表を決められる立場にあったが、1月に本人のSNSで「(五輪について)皆が思っているほどにこだわらなくていい」と、結局は東京マラソンを回避。4月のボストンマラソンへの出場を決めている。
日本陸上界の異端児と言われる大迫は、早大に進学して1年の時に学生駅伝3冠に貢献。瀬古氏にとって大学の後輩にあたる。2015年にプロランナーに転向してからは米国・オレゴン州に拠点を移し、ナイキなど複数のスポンサーと契約を結んでおり、1億円近い年収があると言われている。
ボストンマラソンに3度出場経験のある瀬古氏は「(ボストンは)下り坂が多く回復までに1カ月以上かかる」と話しており、大迫の五輪辞退は織り込み済みだったのだ。
五輪の男子マラソンが日本のお家芸と言われたのは昔の話。大迫自身のマラソン最高記録は2時間5分29秒で、世界記録に照らし合わせると100位にも入らない。
「確かに陸上界では大迫のことを異端児と呼びますが、パリ五輪に出場してもボストンを走ればメダルどころか途中棄権もあるでしょう。五輪は賞金も出ない。そんなレースで大迫が本気を出せるとは思えない」(陸上担当記者)
大迫が辞退すれば、かつて公務員ランナーとして話題を集め多くのレースに出場している川内優輝(パリ五輪では補欠)が繰り上げになる可能性もあった。ただ、誰が走っても多くの奇跡が起きない限り、男子マラソンの長いトンネルは続きそうだ。
(小田龍司)