春の訪れを告げる国内女子ゴルフツアーが開幕した。3年連続の女王を目指す山下美夢有を頂点に、岩井ツインズや原英莉花、歴代最多年間ラウンド数を窺う小祝さくらなど多士済々。さらに、5年ぶりにアン・シネが復帰し、8月の「パリ五輪」の代表争いも熾烈とあって、24年シーズンも見どころ満載だ。
2月29日、今季の国内女子ゴルフツアーが「第37回ダイキンオーキッドレディス」(琉球ゴルフ倶楽部)から開幕した。今年は37試合が予定され、賞金総額44億円と、女子ゴルフ人気は健在である。
主役は新世紀世代の山下美夢有(22)だ。2年連続で女王に輝き、獲得賞金も2億円超え。こちらも2年連続で史上初の偉業を達成した。ゴルフジャーナリストの宮崎紘一氏が解説する。
「様々な最年少記録を塗り替えている彼女の武器は、アプローチの精度の高さ。史上最強と呼ばれるアニカ・ソレンスタム(53)は『ゴルフの土台はアプローチ、その延長にドライバーがある』と説いたものだが、山下も『100ヤード内の練習が基本です』と女王の言葉を体現している」
結果、デビュー2年目の22年に平均ストローク「69.9714」をマークし、昨年は「69.4322」の歴代最少記録を達成した。スポーツ紙記者が賛辞を送る。
「昨年のスタッツを見ると、平均飛距離こそ238.26ヤードで53位ですが、フェアウェイ(FW)キープ率も平均パット数も1位です。1ピン(ピンフラッグの長さは約2.4メートル)に寄せる自慢のアプローチを中心に、彼女の言葉を借りれば『3パットしないゴルフ』さえすれば、3年連続女王が待っている」
身長150センチと小柄な女王のライバルといえば、岩井ツインズの姉で、飛ばし屋の岩井明愛(21)だ。デビュー2年目の昨年はツアー3勝を挙げ、最終戦まで追いすがった。
「昨年5月の『RKB×三井松島レディス』のプレイオフで見せた〝直ドラ〟もすごかったが、正月のテレビ番組のドラコンでは男子並みの280ヤードオーバー。ポテンシャルはトップだろう。彼女のドライバー音を聴くだけでも観戦の価値がある。平均パット数が4位で、平均ストロークと平均バーディー数は、ともに山下に続く2位。今年の目標は『パリ五輪』出場を挙げていたが、山下よりも海外向きに映る」(宮崎氏)
ここで米ツアー組も交えて「パリ五輪」日本代表争いに目を向けてみよう。
「現時点の世界ランキングを見ると、日本人トップの畑岡奈紗(25)が17位のため、日本からは2人のみの狭き門です。ただ畑岡以下、20位の古江彩佳(23)、22位の山下、26位の笹生優花(22)、33位の岩井明愛らが6月28日までに15位以内になれば、最大4人が出場できます」(スポーツ紙記者)
となると、日本ツアーよりもポイントの高い米ツアー組が有利にも見えるが、
「『東京五輪』では、3月1日時点で63位だった稲見萌寧(24)が米ツアー初挑戦だった古江らを抜き去り五輪でも銀メダルに輝いた。今回も稲見や昨年までツアー3勝の吉田優利(23)が米ツアー初挑戦となれば、国内に残った山下や岩井明愛が一気にポイントを伸ばしても驚きません。昨年の米ツアーQT(最終予選会)挑戦をギリギリまで模索した裏には、チーム・スタッフ陣の『優勝確率の高い国内で』という思惑もあったようです」(スポーツ紙記者)
「パリ五輪」では、閉会式の前日が女子ゴルフの最終日という日程(8月7日~10日)が組まれている。誰が出場しても盛り上がることは間違いないだろう。
(つづく)