食用コオロギ会社「倒産」が日本人の拒絶感を浮き彫りにした「昆虫食」の未来

 食用コオロギの養殖や販売を手掛ける「クリケットファーム」が親会社もろとも倒産したことが明らかとなり、大きな話題となった。昆虫食は食糧危機を救う貴重なタンパク源として注目されているが、その一方で激しく拒否反応を示す人も少なくない。このまま昆虫食はフェードアウトしていってしまうのだろうか…。

「クリケットファームは2021年に設立し、環境に配慮した次世代フード『コオロギパウダー』を配合した食品などを販売。諏訪信用金庫および日本政策金融公庫より4100万円の協調融資を受けるなど期待されていましたが事業は軌道に乗らず、昨年末には業務を停止していました。なお、親会社を含めた3社の負債総額は2億4290万円にのぼるといい、食用コオロギが世間に受け入れられなかったことが鮮明となりました」(社会部記者)

 昆虫食は、13年に国連食糧農業機関(FAO)が食料問題の解決策に有効との報告書を発表。15年に開催された国連サミットでは貴重なタンパク源として推奨されたこともあって、欧米を中心に注目されていた。日本では20年に無印良品が「コオロギせんべい」を販売して話題となったが、22年には徳島県の高校で乾燥コオロギの粉末入りの「かぼちゃコロッケ」が給食として提供されたことが物議を醸し、学校には「子供に虫を食べさせるな」といった苦情が殺到した。

「クリケットファーム倒産のニュースにアイドルグループ『仮面女子』の猪狩ともかさんは『現状他に食べるものがあるのにわざわざコオロギを食べたいと思いません』とXに投稿していましたが、これが多くの日本人の本音では。恵方巻は食品ロスで大量廃棄されるのに、なぜ昆虫を食べることを推奨されなければならないのか。疑問に感じる人が多い中で、食糧危機だ、SDGsだと少々前のめりになり過ぎていたことは否めません。ただ、世界では25年までに昆虫食市場が1000億円規模になるという推計もあり、もう少し世界的に昆虫食が受け入れられるようになれば日本でも再び注目される時が来ると思います」(フリージャーナリスト)

 我々が日常的に昆虫を食べる未来は、まだ少し先の話になりそうだ。

(小林洋三)

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