歴史上もっとも有名で、かつ最強の剣豪の1人として今も多くのファンから愛されている宮本武蔵。生涯を剣の道に捧げた彼には妻の存在を示す資料はなく、三木之助と伊織という2人の子供はいずれも養子。61歳で亡くなるまで独身を貫いている。
だが、武蔵を描いた小説や漫画、ドラマ、映画の中には、彼に恋心を寄せる「お通」という女性が登場する作品も多い。03年放送の大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」や井上雄彦の漫画「バガボンド」でも同様に描かれ、岡山県美作市の大聖寺には2人の像もある。だが…。
「実は、このお通は吉川英治の小説『宮本武蔵』で作られた架空のヒロインなんです。ちなみにモデルは豊臣秀吉の正室・北政所の側近侍女の小野お通ですが、史実では武蔵との接点はなかったと言われています」(歴史専門誌編集者)
一方、武蔵はイケメンだったとされており、女性にモテたとの説もある。しかし、武蔵が自身の生き方について記した21カ条の「独行道」には、《一生の間欲心思はず》《恋慕の道思ひよるこゝろなし》など、恋愛感情や性欲を遠ざけていたことをうかがわせる項目がある。兵法書「五輪書」を記したとされる晩年には洞窟に籠って過ごしたこともあまりにも有名だ。
実際、武蔵はその生涯に渡って性に関してストイックであり、「女性経験が一度もなかった」という可能性も指摘されているのである。とはいえ、こんな話もある。
「武蔵は、江戸に滞在していたころ、誕生したばかりの吉原に通っていたという説があり、裏付けとなりうる文献も残っています。そのため、不犯だったのはあくまで素人の女性との間のことで、遊郭などではそれなりに遊んでいたと主張する専門家も少なくありません」(前出・編集者)
剣にこそ生きる道を求めた武蔵と、遊郭で鼻の下を伸ばす武蔵…歴史の謎は深まるばかりだ。