だが自然災害である地震の発生は止められなくとも、震災の規模を縮小することはできる、と高橋氏が言う。
「例えば95年の阪神・淡路大震災を振り返ってみても、能登半島地震は、家の壊れ方が同じなんです。悪い言い方をすれば、過去の大地震から学んでいない。政府は津波の影響を受けない高さの場所に第二東名高速や第二名神高速を作ったり、海岸線を走る新幹線の代わりのリニアモーターカーの設営を目指していますが、これもはっきり言って後手後手です。また、被害想定も甘い。南海トラフ地震の死者数を、最初期の2万人から32万人へこっそり引き上げていますが、それでもまだ生ぬるいですよ。国や自治体による国民への周知が十分でないことが一番の問題です。もっと連動型地震の脅威を訴えなければなりません」
これに、隈本氏も続く。
「自宅が旧耐震基準で建てられた物件であれば、自治体から新耐震への補強工事の補助がほぼ確実にもらえます。石川県では150万円まで自己負担ゼロで工事ができたんです。もちろん2000年基準がベストですが、新耐震にするだけでも、大幅に生存率が高まる。まだ何の対策も施していない方は、まず自宅がいつの基準で建てられたのか、把握することから始めましょう」
とはいえ、政府が何もしていないわけではない。前述の対策に加え、東日本大震災以降、源泉徴収される所得税の2.1%が復興特別所得税として徴収されており、令和19年まで続くが、それでも復興費が不足している現状がある。今回の地震を受けて、災害対応に充てられる一般予備費も、昨年から倍増した1兆円に決定された。だが、増税増税で金だけ集めても、連動地震に直面するまでに市民の意識を変えられなければ、意味はない。
最後に、高橋氏が警鐘を鳴らす。
「連動する大地震は、いつ来るかわかりません。今の日本は、そこら中でプレートがパリパリ割れている状態です。近年の硫黄島の火山噴火なども、首都圏地震の前段階とも言えますからね」
富士山の噴火という最悪の想定すらも現実のものとなりつつある。能登半島以上の大震災が、明日にでも我が身に降りかかりかねないことを自覚すべきである。