50年前に起こった連続企業爆破事件のメンバーとして指名手配され、偽名で逃亡し続けていた桐島聡容疑者(70)とみられる男が、神奈川県内の病院に偽名で入院、病院関係者に突然、自らの正体を打ち明けたとの一報が伝えられたのは、26日夕方のことだった。
報道によれば、男は末期の胃がんを患っており、「最後は本名で死にたい」と自身の正体を告白。病院関係者からの通報により、神奈川県警や警視庁公安部が事情聴取したところ、犯人しか知りえない事実が出てきたため、特定作業を進めていた。しかし29日、男の願いも虚しく、警察により本人証明が出来ないまま、男は「自称元過激派」として死亡が確認されたという。社会部記者が説明する。
「桐島容疑者は、1974年から75年にかけて連続企業爆破事件を起こした過激派・東アジア反日武装戦線のメンバーで、同容疑者は1975年、当時銀座にあった韓国産業経済研究所のビルに爆弾を仕掛けて爆発させたとして、爆発物取締罰則違反の疑いで全国に重要指名手配されていました。一連の事件では8人が逮捕・起訴されていますが、桐島容疑者に関してはこの48年間、その潜伏先が杳として掴めなかったのです」
捜査関係者によれば、「内田洋」と名乗っていた男は、神奈川県藤沢市の土木会社に約40年間住み込みで働いており、関係者の証言では「うっちゃん」という愛称で呼ばれ、口数は少ないが「やさしい口調」で話す人物だったという。
「逃亡中に整形手術をしたのかはわかりませんが、男の顔は手配写真とは似ても似つかぬもので、無精ひげをはやし、髪は白髪の短髪、よくツバのある帽子を被っていたといいます」(同)
JR藤沢駅近くでバーを経営する男性はメディアの取材に対し、20年ほど前から店に来るようになり、常連客からは「ウッチー」の愛称で呼ばれていたと証言。女性との付き合いの話題になると「自分は幸せにできるタイプじゃない」と話していたという。
「コロナ前には、マスクもせずに堂々としていたと言いますから、自分は捕まらないという自信があったのかもしれません。実は、東アジア反日武装戦線が地下出版した『腹腹時計』と呼ばれる教本には、爆弾製造やゲリラ戦の方法のほか、一般市民として怪しまれない心得として《正体を知られてはならない。極端な秘密主義に陥らぬこと。最低限、隣人とのあいさつは不可欠》などという記述があり、男はこの48年間、そのマニュアルを忠実に守ってきたのではないか。そうすることで、『普通の人』を演じ切ってきたのかもしれません」(同)
ちなみに、今回の48年ぶりの身柄拘束では、男の指名手配写真と顔が似ているとの理由で、芸人の宮川大輔がX(旧・ツイッター)でトレンド入りするという珍事も発生。SNS上には《容疑者逮捕で宮川がトレンド入りするのって風評被害にも程がある》といった同情の声も続出する騒ぎにもなったが、ともあれ、事件は半世紀の時を経てもなお、全容解明に至らぬまま、男の死により幕切れを迎えてしまうことになった。
(灯倫太郎)