「台湾新総統を威嚇」習近平に訪れる“好機”とは/「第三次世界大戦」戦慄の導火線(2)

 2024年は世界中で政治イベントが目白押しだ。大きなものでは、1月の台湾総統選、3月のロシア大統領選、そして11月のアメリカ大統領選と続く、初っ端の台湾の総統選がその後の世界情勢を左右することになる。

 13日の総統選は、現職の蔡英文総統(67)擁する与党の民進党・頼清徳氏(64)が勝利したが、事前の調査では、最大野党・国民党の侯友宜氏(66)、第3勢力の民衆党・柯文哲氏(64)が僅差で追っていた。中国としては、頼氏の当選は絶対避けたいところで、場外戦による妨害に余念がなかった。

「台湾上空に謎の気球を飛ばし、野党候補が有利というデマニュースを発信、9日には衛星を打ち上げて台湾上空を通過させるなど、選挙介入を行っていました。下馬評通り頼氏が当選すれば、現在も行っいる禁輸措置や関税優遇措置の停止の追加といった経済的締めつけ、軍用機の停戦ラインを無視した飛行などの軍事的圧力をかけ続けるのは必至です」(外報部デスク)

 緊張はいよいよ増してきた。習近平主席が昨年12月31日、新年を迎えるに当たっての恒例の挨拶で、台湾の統一は「歴史的必然」と公言したからだ。24年に「台湾有事」はどう動くのか。「選挙の結果がどうであれ、すぐに有事にはつながらない」と見るのは、軍事ジャーナリストの潮匡人氏だ。

「いつあるかと言えば、習近平の腹ひとつですから、何とも言えませんが、少なくとも今はそのタイミングではない。一昨年のロシアのウクライナ侵攻があって、現在はそこに中東の戦争も加わっています。パトリオットミサイルの輸出の形で、日本まであてにするくらいアメリカはそちらの支援で手一杯。余裕がない状態です」

 さらに、こう続ける。

「つまり、こうした動きを見ると、中国にとっては有利な状況にあるわけで、急いでコトに当たる必要はないわけです。加えて11月の米大統領選で、〝アメリカファースト〟のトランプが大統領に返り咲けば、ますます中国にとっては都合がいい。アメリカはイスラエル支援で中東に空母打撃群を派遣しているので、この時期に台湾にちょっかいを出して、わざわざ留守になった空母を台湾海峡に呼び寄せるようなまねをすることは考えられません」

 これには軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏も同意見だ。

「現状の軍備を見れば、中国はアメリカには勝てません。習近平のプライドの高さを考えれば、負けるような戦争はしないはず。台湾有事に関しては、昨年2月に、CIAのバーンズ長官が27年が1つのメドだとしましたが、中国はそれまでに戦力を構築するつもりなので、やはり27年というスパンで考えるべきでしょう」

 ただ、それ以外の可能性がないわけではない。例えば北朝鮮の暴発のような不測の事態がそれに当たる。

「北朝鮮は年明け早々に韓国に向けて連日の砲撃を行って朝鮮半島の緊張が高まっています。もし現場で韓国軍と不測の事態が発生し、大がかりな武力衝突に発展するようであれば、在韓・在日米軍もそちらに注力せざるをえない。中国にとっては好機となるでしょう」(潮氏)

 果たして、台湾総統選の結果を受け、中国がどう出るか。新総統が5月の就任演説で何を語るかを世界が注視している。

(つづく)

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