最大級の空爆の裏で…ロシアが「北朝鮮製ミサイル」を本格的に使い始めた「深刻理由」

 2024年に入ってもなお、ロシアによるウクライナへの攻撃は激化するばかりだ。8日、ウクライナの複数の都市にロシア軍による弾道ミサイルが浴びせられ、少なくとも4人が死亡、40人以上が負傷した。使用されたのは北朝鮮製ミサイルと見られている。

 ロシア軍の大規模攻撃は昨年12月29日から断続的に続いている。この時もウクライナの首都キーウをはじめ、ハルキウ、オデーサ、ドニプロなど全域に空爆を実施。ウクライナ軍によれば、発射されたミサイル122発は、いずれも36機のドローンに搭載されたもので、この攻撃で約40人が死亡。さらに年明け2日にも、キーウとハルキウなどに、ミサイルとドローン数十機を動員した大規模空爆があり、約100人の死傷者が出たと発表している。

「ゼレンスキー大統領は2日、ロシア側が12月31日から約170機のドローンと数十発のミサイルをウクライナに発射したことを明らかにしましたが、ウクライナ軍のザルジニー総司令官によれば、ミサイル99発のうち、極超音速ミサイル10発、巡航ミサイル59発、カリブルミサイル3発の計72発は撃墜に成功。35機のドローンもすべて撃墜したとしています。とはいえ、このミサイルの数は戦争勃発以来、最大級とされ、武器弾薬の枯渇が伝えられたロシア軍だけに、その入手先が注目されていました」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)

 そんな中、米ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は4日、ロシアのミサイル入手先は北朝鮮であると断定。しかも、北朝鮮がロシアに提供した兵器の中には、弾道ミサイルと発射装置も含まれていると発表したことで、世界に衝撃が走った。

「カービー氏によれば、12月30日にロシア軍が北朝鮮製弾道ミサイルをウクライナに向け発射したといいます。また、1月2日の大規模空爆の際にも複数の北朝鮮製ミサイルが使用されており、8日の攻撃で着弾したミサイルの残骸も北朝鮮製短距離ミサイル『イスカンデル』と酷似していたことが分かっています」(前出・ジャーナリスト)

 実は、昨年10月末にはすでに、テレグラムの親ロシア派チャンネルに北朝鮮製152ミリ多連装ロケット弾と見られる武器の映像がアップされている。さらには、ロシア国防省のSNS映像にも、北朝鮮製122ミリロケット弾と酷似した武器が写り込んでいたこともあり、北朝鮮製兵器がロシア軍へ提供されていることは既成事実とされてきた。ただ、北朝鮮製兵器の本格導入は、裏を返せば自軍の武器弾薬の枯渇を証明しているともいえる。

 国連安保理では2006年以降、北朝鮮との通常兵器および弾道ミサイルなどの取り引きを禁止し、その後、対象を小型兵器にまで拡大している。今回の北朝鮮製ミサイル使用でロシアが国連安保理制裁違反を犯したことが明白になったとして、10日に開かれる安保理会議では北朝鮮とロシア両国に対する制裁違反問題が提起される予定だ。

 戦争の早期終結のためにも、安保理の厳しい姿勢が求められる。

(灯倫太郎)

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