いま韓国議会が、大統領夫人のスキャンダルで揺れに揺れている。
尹錫悦が大統領に就任したのは22年5月だが、配偶者である金建希(キム・ゴンヒ)夫人が政権発足後の昨年9月、日瑞草洞の事務室に面会に訪れた男性から高級ブランド「ディオール」のバック(300万ウォン=約34万円)をプレゼントされ、その現場のシーンがYouTubeに公開されたというのである。
これが何かの対価であるなら賄賂に当たり、キム・ヨンラン法(不正請託防止法)違反となることから、野党「共に民主党」が夫人のスキャンダルを追及。韓国メディアも連日、この話題を大々的に報じている。韓国在住のジャーナリストが説明する。
「疑惑の動画をアップしたのは11月27日更新のYouTubeチャンネル『ソウルの声』で、夫人にバックを手渡した人物は、北朝鮮と韓国を往来しながら南北統一運動を展開しているチェ・ジェヨンという牧師です。動画は、チェ牧師がつけていた腕時計の内蔵カメラで撮られたようですが、後に仕掛けたのが『ソウルの声』の記者だったことが判明。実はこの記者は以前、夫人との7時間におよぶプライベートな通話内容を勝手に公開し、現在もなお大統領夫妻と訴訟の渦中にある人物で、動画公開後に『ソウルの声』を退社しています。むろん取材方法について批判もありますが、野党側は、実際にプレゼントされたのか、受け取ったなら返したのか、それとも今も持っているのか、さらにはプレゼントしたチェ牧師とはどんな関係なのかを大統領室として明らかにしてほしいと、強く要求しているのです」
常識的に考えて、プレゼントを事前に用意し、それを腕時計の内蔵カメラで撮影するという手法を、はたして取材と呼んでいいかは甚だ疑問だ。韓国の放送労働組合も今回の取材方法を「許容範囲を超えている。おとり取材で大統領夫妻の名誉をおとしめようとする悪意を感じる」と切って捨てている。
一方、このチェ牧師は、南北統一運動を展開するバリバリの親北朝鮮牧師として韓国では知られる人物なのだとか。
「南北統一運動の活動家でもあるチェ牧師は、かつて『朝鮮キリスト連盟』の招請を受けて『停戦協定60周年記念説教』のために北朝鮮を訪問し、複数の宗教施設を訪れたことを語っています。また2019年には、北朝鮮を訪問した際、北朝鮮の統一教(旧統一教会、現・世界平和統一家庭連合)を視察し、北朝鮮と統一教の関係について詳しくリポートする記事を月刊誌『現代宗教』に掲載している。そのため韓国メディアでは、統一教とも何らかの関連がある人物ではないかとみられています」(同)
一部報道によれば、夫人とチェ牧師は同じ韓国北部・楊平出身で、プライベートでも連絡を取り合う仲だという。プレゼントは、北朝鮮に対し厳しい姿勢を取る現政権に対し、融和を求める意図があったと推測するメディアもあるが、むろん真相は不明だ。
大統領室は現在まで、この疑惑について回答を明らかにしていない。韓国のファーストレディを突然襲ったスキャンダルに、国民の関心が注がれている。
(灯倫太郎)