金正恩の娘ジュエに「女将軍」の敬称…衛星成功でついに偶像化が始まった

「これで万里を見下ろす『目』と、万里を叩く『拳』の両方を我々は手に入れた!」

 11月22日、前日に打ち上げた軍事偵察衛星「万里鏡1号」の作動報告を受け、北朝鮮の金正恩総書記は、そう歓喜の声を上げたという。

 28日付の労働新聞によれば、偵察衛星はすでにアメリカのホワイトハウスや国防総省を撮影し、その衛星画像は正恩氏に報告されたというが、ただし写真や映像の公開はなし。そのため韓国軍は、衛星画像の解像度が粗すぎるか、あるいは偵察能力を隠すためにあえて公開しないのではないか、との見解を示している。

 偵察衛星の打ち上げ成功を受け、北朝鮮メディアも連日このニュースを大きく報じているが、正恩氏の隣には必ずといっていいほど娘・ジュエ氏の姿があり、そのツーショットはもはや日常となった感もある。北朝鮮に詳しいジャーナリストが語る。

「21日、偵察衛星打ち上げ後に行われた科学者らとの記念撮影でも正恩氏の隣にジュエ氏が映っていますし、23日に行われた国家航空宇宙技術総局の技術者らとの成功を祝う宴会でも、正恩氏の隣にジュエ氏というのが定位置となっています。一時期は、ブランド品を身に着けふくよかなジュエ氏に対し国民の不満が募り、表舞台から姿を消したとの憶測も流れましたが、最近はむしろ堂々と公の場に同伴するようになっている。韓国情報筋も、彼女が正恩氏の正式な後継者であることを内外にアピールしているとの認識を示しています」(同)

 そんな中、米政府系メディアのラジオ・フリー・アジア(RFA)は28日、朝鮮労働党指導部が軍事偵察衛星打ち上げ成功を祝う記念講演会において、ジュエ氏のことを「朝鮮の新星」「女将軍」などと呼び、偶像化を始めたと報じたのである。

 報道によれば、講演会で演説した同党幹部は、「ついに敵対勢力の軍事的企図を常に掌握できる偵察衛星を宇宙に配備することに成功した」「これで朝鮮に宇宙強国時代が開かれた」と強調したのち、続けて「宇宙強国時代の未来は『朝鮮の新星』女将軍により今後さらに光り輝くだろう」と付け加えたというのだ。

「ジュエ氏が初めて公の場に姿を見せたのは、昨年11月に行われた新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)試験発射場ですが、その際は『愛するお子様』と呼ばれ、その後『尊貴なお子様』といったように、呼称が格上げされていきました。ところが今年3月には、正恩氏に同行する写真は公開されるものの『愛するお子様』等の呼称がなくなり、国民から批判の声が噂されはじめた5月の軍事偵察衛星視察を最後に、写真すらも配信されなくなっていた。しかし、最近は公の場でのツーショットが復活。それが頻繁になり、今回に至っては『朝鮮の新星』『女将軍』ですからね。この『朝鮮の新星』という呼称は、金日成の初期の革命活動を宣伝する時に使った尊称語。もし本当に労働党幹部がこれを使ったのであれば、国がジュエ氏の偶像化を始めたと考えて間違いないでしょう。つまり、彼女こそが金正恩総書記の後継者になるということが確約されたということです」(前出・ジャーナリスト)

 かつては、正恩氏には3人の子供がおり、第1子は男子との情報もあったが、近年はジュエ氏第1子説が濃厚だというのだが…。

(灯倫太郎)

ライフ