休んでいる場合じゃない!? 幸楽苑が「年末年始も営業復活」の深刻裏事情

 ラーメンチェーン大手「幸楽苑」が本年度の年末年始を休まず営業すると発表した。同チェーンが年末年始を休まずに営業するのは17年以来となる6年ぶりということもあり、話題となっている。

「『幸楽苑』はスタッフの士気向上を目的に、2018年12月31日と2019年1月1日に全店一斉休業を行いました。当時は飲食チェーンの多くが年末年始も営業しており、また2日で見込まれていた売上2億円を捨ててまで働き方改革に着手したとして話題となりました。『2億円事件』という見出しを打ってみずから新聞広告も掲載していましたね。そして、この取り組みは多くの企業に影響を与え、飲食業界のみならず、スーパーや百貨店でも年末年始を一斉休業にするところが増えたのです」(社会部記者)

 そんな幸楽苑がここに来て方針を転換した背景には何があるのか。実は、新型コロナウイルスが5類に移行し、人流が活発化して多くの飲食チェーンが業績を回復させる中、同チェーンは苦戦を強いられている。23年3月期の連結決算では最終損益が約28億円の赤字となり、11月10日に発表された24年3月期第2四半期(23年4月~9月)でも赤字から脱却できていない。今年6月の株主総会で創業者の新井田傳会長が社長も兼任することが決まり、経営に大ナタを振るうのではと言われていた。方針転換はその新井田会長兼社長の意向だという。赤字を前にして、年末年始を休んでいる場合ではないということなのかもしれない。

「同チェーンはこれまで、従業員の満足度向上のために全店一斉休業するとアピールしてきましたから、年末年始を休まず営業することに決めたことを否定的に捉える人も多いようです。従業員の満足度を優先するあまり、雇用がなくなってしまったら元も子もないという主張はその通りなのですが、年末年始以外でもっと頑張れることがあるのではないか、という指摘もあるのです」(フードジャーナリスト)

 今回の措置にネット上では、《わざわざそこで取り返そうとしなくても》といった声もあがっている。「年末年始はお休み」という昔ながらの文化を再び根付かせつつあった同チェーンの試みだっただけに、残念に思う消費者も少なくないようだ。

(小林洋三)

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