現在、新聞や郵便などの配達業務で使用されているのが、排気量50cc以下の「原チャリ」こと「原動機付自転車」だ。
ところが、この原チャリが、2025年11月、環境規制強化で新車市場から消えるというのだ。国土交通省が、新たな排出ガス規制(「令和2年度排出ガス規制」)を公布、施行したのは2019年2月のことだが、この規制により、2022年11月以降に生産されるバイクはすべて、欧州を中心に採用されている「ユーロ5」とほぼ同水準の規制となることが決定。ただ、排気量の小さな原付一種については、排気量の大きなバイクに比べ、排出ガス浄化が技術上難しいことから、原付一種のみ令和2年度排出ガス規制の適用が2025年11月まで猶予されることになったという。モータージャーナリストが解説する。
「令和2年度の規制が公布されて3年。現時点でも原付一種のほとんどは、この排出ガス規制をクリアできていない状況で、このままいけば、2025年11月には確実にすべての原付一種が生産終了となり、以降、50CCバイクは、中古車市場で流通するもの以外、国内では販売ができなくなります。むろん、50ccクラスの電動車もありますが、割高で、電動化補助金も自治体によってまちまち。そのため、即電動に移行することは難しく、地方の郵便局や新聞販売所などでは、対応に苦慮していると聞いています」
現在政府では、原付免許で運転できる車両を51cc以上の車両に拡大する案を検討。安全性や運転の容易性等を重点に検し、総排気量125cc以下の二輪車も原動機付自転車区分としたいとして、今年9月には有識者検討会を開催するなど模索中だ。
「50ccのバイクであれば、現状、普通免許を所持していれば運転することが出来ますが、それ以上となれば、新たに免許を取る必要が出てくる。とはいえ、その費用と時間を事業者に負担させることはいかがなものか、ということで、警察庁でも排気量で区分された現在の免許制度の見直しに着手し始めています。いずれにせよ、事業者の負担が大きくなることは避けられないでしょうね」(同)
日本自動車工業会の発表によれば、原付の販売台数は1980年以降右肩上がりに上昇。最盛期には年間200万台を超えたものの、徐々に減少し、2021年には10分の1以下の約13万台に。それでも、配達業界にとっては、小回りが利き、普通免許さえあれば運転できる「原チャリ」が、なくてはならない存在であることは間違いない。
「ただ、今年7月には、特定小型原付が新設され、原付一種に区分されていた電動キックボードの規制も緩和されたことを考えると、国としては、もはや短距離での移動は、バイクよりも電動キックボードを利用してほしい、と推奨しているようにも思えます。そうなると、本当に『原チャリ』が日本から消える可能性だってゼロではないということ。もしかしたら、数年後には日本製原付自転車が途上国でしか乗れない時代が来るかもしれないということです」(同)
海外では大人気の、スーパーカブも、日本で見られる日はあとわずかかもしれない。
(灯倫太郎)