阿部監督は知らなかった!? トレード獲得「即戦力投手」2人に「思わぬ弱点」

 起用法、いや、再生方法について、阿部慎之助監督はもう一度考えたほうが良い。

 ソフトバンクから巨人に移籍した高橋礼、泉圭輔両投手の入団会見が宮崎市内で行われたのは11月9日だった。

 2人はさっそく翌日から秋季キャンプに合流したが、阿部監督は高橋について、現役時代に対戦したことを振り返りながら、「あんなに速いボールが」と、緩急のピッチングに翻弄させられた、とコメントしたものだ。

「アンダースローの高橋は緩急を使い、直球を実際の数字以上に見せてきました。130キロ台の直球を速いと感じさせられたのは阿部監督だけではありません。さらに、曲がり幅の大きい変化球も武器でした」(スポーツ紙記者)

 しかし、近年はファームで過ごす時間のほうが多くなっていた。パ・リーグのライバル球団スタッフがこう言う。

「直球のスピードが落ちてきたんです。緩い、遅い変化球があっても、直球の球速が落ちてくれば緩急での勝負はできません」

 ただ、高橋はこれまでも球速の回復に時間を費やしてきており、この球団スタッフも「戻りつつある」と認めてはいた。

 また、一方の泉に関してもこんな評価が聞かれた。

「泉が今季活躍できなかったのは、『心のスランプ』が原因でしょう。22年のペナントレース最終戦、ソフトバンクは『優勝マジック1』でした。その『勝てば優勝』の試合で、泉は逆転3ランを許してしまいました。チームは優勝を逃し、泉はファンからバッシングを受けたのです」(前出・記者)

 そんな高橋、泉の放出を決断したのは、小久保裕紀監督だ。復活に向けて苦しむ2人を二軍監督として支えてきたが、「環境を変えてやるのが彼らのため」と判断したのだろう。一度失敗すると、首脳陣はその兆しがチラ付いただけで『またか』と批判的に見てしまう。だが、評価を下す監督、コーチが変われば、過去の失敗を重ねて判断されることはない。

 今回のトレードは巨人側から申し込みがあったという。小久保監督は巨人に在籍したことがあるので、阿部監督の性格も知っている。「阿部監督なら、2人を任せても大丈夫だ」との判断もあったようだ。

 いずれにせよ、阿部監督は高橋の直球が遅くなっていることを認識する必要がある。その上で新しい投球スタイルの構築を手助けしてやらなければ、信頼して2人を任せた小久保監督との関係にも影響しそうだ。

(飯山満/スポーツライター)

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