イスラエル軍の空爆で街ががれきの山となっても徹底抗戦を続けるパレスチナ・ガザ地区の武装勢力ハマス。民間人にも連日多数の犠牲者が出ているが、彼らも決して勝算のないジハード(聖戦)を続けているわけではないという。
「実は、ガザ地区には地下トンネルが縦横無尽に張り巡らされ、ビルなどの建物に入口が設けられています。ハマスは21年にトンネルの総距離は約500キロに及ぶと明かしています。地上侵攻が迫り、明らかな劣勢でも強気な姿勢を貫く要因のひとつになっています」(軍事ジャーナリスト)
ちなみに500キロといえば、東京—大阪の距離に匹敵し、東京メトロの総延長距離(195キロ)のおよそ2.5倍。ガザ地区は東京23区の6割程度の面積のため、彼らが言っていることが事実なら地下に網の目のようにトンネルが存在するというのも納得できる。
「ベトナム戦争でも北ベトナム軍は総延長約250キロの地下トンネルを駆使した消耗戦を展開。ソ連や中国の支援も大きかったですが反撃に転じ、南ベトナムの首都サイゴン(現ホーチミン)を陥落させて米軍を撤退に追い込んでいます。パレスチナとベトナムでは状況が違うとはいえ、ゲリラ戦が弱者の戦い方として有効なのは歴史が証明しています」(同)
ガザ地区とエジブトとの国境に位置するラファ検問所は、今のところ人道支援物資を積んだバスの通過が限定的に許されているのみ。ただし、同時に国境を超える地下トンネルも多数存在し、武器弾薬が運び込まれているとも言われている。
「しかし、地下トンネルの多くは人が通れるほどの幅しかありません。生活物資もここからある程度運び入れていると思われますが、ガザ地区に暮らす200万人以上を賄うのは不可能。現在はハマスが厳しく管理しているため、一般のパレスチナ人が地下トンネルを使ってエジプトへ脱出することもできません」(同)
どうやら地下トンネルの存在が今後のガザ地区の行方を大きく左右することになりそうだ。
※画像はイスラエル軍がかつてガザ地区侵攻した際に撮影、公開された地下トンネルの入口