101回目の夏の甲子園大会は、大阪代表・履正社の初優勝で幕を閉じた。
「センバツ大会で敗れた星稜・奥川恭伸にリベンジを」の思いを果たした同校の奮闘に拍手が送られたが、日本高等学校野球連盟(以下=高野連)スタッフの表情はさえない。大会中を理由に保留になっていた投球数制限問題に対し、何かしらの回答を出さなければならないからだ。
「世論は連投などに対する制限を設けたほうが良いという意見が強いようですね。でも、投手の登板に関する制限を作ると、部員数の少ない公立校は不利。かといって、中途半端な投球数制限を設ければ、球児の健康問題を考えていないとの誹りを受けかねません」(アマチュア野球担当記者)
高野連は有識者による計4度のヒアリングを行い、11月の理事会で結論を出す予定。しかし、今夏の甲子園大会に問題解決のヒントがあったという。
「仙台育英ですよ。仙台育英が決勝戦まで勝ち上がっていたら、同校の投手育成論がそのまま採用されたかもしれません」(同前)
仙台育英は「1年生は練習でのキャッチボールを含めて1週間に300球まで」と投球数を制限している。試合だけではなく、普段の練習から気を配っていけば、大きな故障に見舞われることはないとの考え方だ。
現在、仙台育英を率いているのは須江航監督。まだ30代半ばで、昨年1月の監督就任前は系列中学校の軟式野球部顧問だった。
「須江監督は仙台育英の野球部OBでもありますが、大学時代は早々に学生コーチとなり、プレーヤーとしては輝かしい経歴はありません。中学の軟式指導が長く、仙台育英の指導法をサンプルにするとなると、他の古参の高校野球指導者には抵抗感があるかもしれません」(同前)
須江監督は中学野球部の全国大会で部員たちを優勝に導いた実績もある。そのため、同監督が仙台育英の指導者に昇格すると決まったとき、中学校の部活動を統括する中学体育連盟は大きな期待を寄せたそうだ。
高野連は、高校部活動を統括する全国高等学校体育連盟(高体連)には所属していない。学校組織とは一線を画して70年余の歴史を築いてきたというプライドがあるだけに、高野連も“須江メソッド”をそのまま受け入れることに抵抗感がないとは言えないだろう。
「大学の東都リーグでは、独自に連投に関する取り決めをしています。参考事案を探すとしたら、東都リーグの取り決めが採用されそう」(関係者)
選手権大会100年余の歴史の中で、唯一、優勝校を出していないのが東北地区だ。「白河の関所越え」が果たされれば、連投や投球数制限の問題は一気に解消されたかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)