この10月から新ルール適用が始まったふるさと納税。ふるさと納税に熱心な人の多くは、既に9月中に駆け込みで寄付を終えているかもしれないが、いま一度変更点を確認すると、大きくは以下の3点だ。
(1)必要書類の発送費用、仲介サイトへの手数料などの経費を含めた返礼品調達費用を寄付金額の5割以下とする。(2)熟成肉と精米は自らの都道府県内で生産されたものとする。(3)地場産品とそれ以外のものをセットにする場合、地元産が返礼品の価値全体の7割以上になること。
「ふるさと納税の返礼品のルールとしてもともと総務省は『返礼品は寄付額の3割以下』『発送費用などを含めて寄付額の5割以下』と定めていましたが、実際は専門サイトへの手数料、受領証の発行費用、ワンストップ特例申請書にかかる事務費用が含まれていませんでした。10月からの新ルールは、これらを含めて5割以内に収まるよう義務付けたものです。そのため、自治体が従来の返礼品を維持する場合、概ね1000円ほどの寄付金額上昇になっているようです」(経済ジャーナリスト)
また、名指しされた精米と熟成肉については、「大阪泉佐野市を狙い撃ちしたものであることは誰が見ても明らか」(同)だという。というのも、泉佐野市のふるさと納税は全国5位の寄付金を集めるほど人気で、最も力を入れていたのが精米と熟成肉だったからだ。ところがこれ、米と肉の産地は県外のもの。泉佐野市で精米や熟成加工したものを返礼品としていたので、厳密な意味での“ふるさと応援”になっていないとの判断だ。
泉佐野市とふるさと納税と言えば、かつて豪華返礼品やAmazonギフト券をつけるなどのキャンペーンを行い、悪ノリしているとして総務省と対立。ふるさと納税制度からいったんは除外され、これを不服とした泉佐野市が訴えて裁判に。さらにはこれに付随して減額された国の特別交付税を巡っても訴訟に発展したことは記憶に新しい(泉佐野市の勝訴)。
そこで総務省のルールに従って精米と熟成肉を扱っていたところ、またもダメ出しされた恰好だ。いわば「泉佐野市スキーム封じ」とも言えそうだが、これで進むと思われるのが観光都市と地方との戦いだ。
「もともとふるさと納税は、北海道の海産物や米どころの米、九州の肉など、ご当地ならではの食べ物の人気が高かった。一方、住民税の税収が減ることから、都市部の自治体からは批判の声が上がっていました。そこに危機感を抱いた京都府は今年からふるさと納税に本格的に取り組み始めたのですが、観光地ならではのクーポンを導入して人気が急上昇しているのです」(同)
つまり今後は、京都のような観光都市と食べ物などに明確な売りのある地方都市が、人気の上位を争うことになるだろう。返礼品のルールが厳格化された中、多くの寄付を集めるためには、地場産業強化や独自性をより求められることになる。
(猫間滋)