ロシアを訪問していた北朝鮮の金正恩総書記が17日、6日間の訪ロを終えて専用列車で帰国の途に就いた。正恩氏は10日に専用列車で北朝鮮を出発。12日午前にロ朝国境のハサン駅に到着してさらに1550キロ移動、翌13日に極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地でプーチン大統領と首脳会談を行ったわけだが、実質7泊8日は文字通りの強行軍だった。
首脳会談では武器提供などが話し合われたとされるが、むろんその詳細は不明。ただしこの会談、正恩氏が3日かけて2700キロという距離を移動して実現したにもかかわらず、プーチン氏と面会したのは4時間程度。しかも、プーチン氏は正恩氏との晩餐から2時間後にはアムール州近郊のガス処理工場を訪問したとクレムリンのHPにあることから、正恩氏を残したまま、通常の業務に戻ったことになる。
「それどころか、正恩氏はその後、ロシア内の他の2つの都市を訪問、軍事関連施設などを視察するも、招請国の首長であるプーチン氏は同行せず、事実上一人での歴訪となった。16日にはショイグ国防相とは会ったものの、それ以外はロシア政府の首脳による随行はなし。しかも正恩氏一行はホテルではなく、乗って来た列車に宿泊。食事もプーチン氏との公式晩餐以外は列車内で済ませているようです。警護保安上の問題でそういった措置が取られたものと思われますが、外国首脳が訪問時に自分が乗ってきた列車に宿泊するなど前代未聞のことですからね。そんな不可解な処遇が憶測を呼んでいます」(全国紙国際部記者)
プーチン氏の態度がそっけなかった理由としては、北朝鮮側が提案した支援策の中身が期待するものではなかったのでは、と分析する専門家もいるが、
「砲弾を提供すると言っても北朝鮮にも数に限りがあり、またロシアからの見返りとなる支援や軍事協力が期待に見合わなかった可能性があります。また一部報道には、ロシアはそもそも北朝鮮を自国の衛星国としてしか見ておらず、武器を手に入れた後にプーチン氏が見せた金正恩に対する態度こそ本来の対応という見立てもありましたが、たしかにそうした解釈ができなくもない。つまり今回の会談でプーチン氏は、かつての伝統的なロ朝関係に戻すとともに、北朝鮮との蜜月ぶりを演出することで、傍観している中国・習近平を動かす手掛かりにしたい。そんな思惑が透けて見えます」(同)
要は今回の金正恩招請の裏には、中国へのアピールがあり、「このまま武器供与しないのなら、オタクの子分である北朝鮮を私の手下にしますよ」というプーチン氏の警告があったのではないかというのである。今後の中国の反応が見ものである。
(灯倫太郎)