ロシア極東のウラジオストク市で開催されている東方経済フォーラムに北朝鮮の金正恩総書記は出席するのか、世界が注目している。プーチン大統領と金総書記の首脳会談が実現すれば、2019年4月以来、4年半ぶりのこととなる。
ウクライナとの戦争で枯渇する武器弾薬が喉から出が出るほど欲しいロシア。対して、経済制裁以来、もはや経済は崩壊寸前。一日も早いエネルギーと食料の供給が緊急課題だとされる北朝鮮。そんな両者の利害関係は一致している。
「特に今、北朝鮮では食糧難から都市部を中心に強盗や殺人事件が多発。急激な治安悪化を受けて、政府が『凶悪犯罪撲滅グループ』を新設したものの、まったく成果がみられず、日本で言うところの国会にあたる9月下旬の最高人民会議で、金徳訓首相が失敗の責任を取って更迭されるとの情報も流れているほどです」(北朝鮮ウォッチャー)
この「凶悪犯罪撲滅グループ」は政府の肝いりにより、警察組織を監督する社会安全省が設置したもので、24時間体制で特別機動隊が街中を見回りするというもの。ところが、相変わらず賄賂を要求する腐敗警官もおり、犯罪の撲滅どころか国民感情を逆なでしたことで、かえって犯罪が増えてしまったともいわれている。
「韓国の国家情報院の発表によれば、北朝鮮における暴力犯罪件数は今年1月〜7月だけで前年同期比で3倍。しかも組織化する傾向がみられ、夏以降はさらに増える可能性が指摘されています。背景には食糧不足などによる貧困があることは言うまでもありませんが、国情院によると、今年の北朝鮮のトウモロコシ価格は昨年より約6割、コメも3割上昇し、これは金正恩政権発足後で最高の値上がりなのだとか。この状況を受け、餓死者は例年の3倍に増加、自殺者も昨年から4割増加したと報告されています」(同)
そもそも北朝鮮では「自殺」は最も忌み嫌われる行為の一つだ。本来は革命に捧げるべき将軍様から授かった大切な命を「勝手に投げ捨てた裏切り」行為として遺族が罰せられることもある。
「近年では遺書を書いて一家心中をする者まで出ているようで、そうなると裏切り行為を越えて、国家に対する反逆にあたるわけです。正恩氏も自殺増加を危惧し、5月には各市や郡の朝鮮労働党委員会の幹部を集め緊急会議を開き、打開案を検討したと言われています。が、食料がないという抜本的な状況を解決できない限り、自殺者も犯罪も減るはずがない。そういう意味でも、プーチン大統領との会談は問題解決のために是が非でも実現させたかったはず」(同)
東方経済フォーラムは13日まで開催されている。はたしてプーチン大統領との首脳会談は実現するのか。
(灯倫太郎)