8月24日、南アフリカで開催されたBRICS首脳会議にオンライン形式で参加したプーチン大統領。むろん、理由は3月に国際刑事裁判所(ICC)から出された、ウクライナでの戦争犯罪容疑での逮捕状により、南アに入国すれば逮捕義務が生じるため、協議の結果オンラインでの参加という形を取ったとみられている。ところが、そんなプーチンが、10月にも中国へ訪問する可能性が固まったというのだ。
9月1日のインタファクス通信によるとプーチンはこの日、新学年が始まった小学校の公開授業に参加し、そこで「近くいくつかのイベントがあり、中国国家主席との会談もある」として、日時についての明言を避けたものの、習主席を「ロシアと中国の関係発展に向け導いてきた友人」と表現し、再会を待ちわびている様子だったという。
「実はこの発言に先立ち、先月28日にはペスコフ大統領報道官が、プーチンの外遊について、『計画している。しかるべき時期に発表する』とコメントし話題になっていたんですが、まさか突然の訪中宣言が飛び出すとは…、本当に驚きましたね」(国際部記者)
というのも、プーチンは同じく28日、インドのナレンドラ・モディ首相と電話で会談し、「G20サミットには出席できない。代わりにラブロフ外相が出席する」と述べたばかり。インドはICCに加盟する130カ国には含まれていないため、入国しても逮捕状が執行される可能性は低いのだが…。
「にもかかわらず、プーチンは欠席することを選択し、代わりに訪中を選んだとなると、今度はロシアとインド、インドと中国との関係性も微妙になってくる。たしかに、中国もICC加盟国ではないため、逮捕されるリスクは少ない。しかし、BRICSとG20で現地入りを見送る一方で、訪中するとなれば、BRICS首脳から疑問の声が上がることは間違いないでしょうね」(同)
10月に中国で開催される「一帯一路」の国際会議にプーチンが出席するため、準備しているとの報道もあったが、ここへきていきなりの「訪中宣言」の背景は何を意味するのか。
「目的はズバリ、なかなか両国の思惑通りにまとまらないBRICS内における関係強化だと考えていいでしょう。ロシアと中国にとってBRICSの目的は西側に対する対抗軸拡大にある。しかし、現状、インドやブラジル、南アフリカの3カ国は西側との協調・維持を考えており、中露の動きに難色を示すといった側面もある。特にインドについては、ロシアと軍事、経済面で深く結びつき、ウクライナ侵攻後も天然資源の輸入を増加。中国とも、経済面で深い結びつきを持つ一方、中印の間では相変わらず国境紛争が続き緊張関係を維持したままです。さらに、インドはクワッドにも参加し、ロシアや中国との間で絶妙なバランスをとっている。つまり、プーチンの訪中は対インドをはじめとしたBRICS関係強化がテーマになると考えられます」(同)
大風呂敷を広げた「一帯一路」構想も問題が山積する中、はたして両首脳の会談で何が語られるのだろうか。
(灯倫太郎)