千葉ロッテ・佐々木朗希の「左内腹斜筋損傷」が明るみに出たのは、7月25日だった。前日のソフトバンク戦で先発し、90球を超えたあたりから違和感があったという。佐々木は奪三振と防御率の2部門でトップを走っていた。優勝争いを続けているチームにとっても痛手だが、米球界挑戦の時期にも影響してきそうだ。
「佐々木に対する評価が変わることは全くありません。彼は今すぐこちらに来ても通用しますよ。潜在能力はメジャーの有望な若手投手と比べても屈指。でも、復帰後の登板は注視したいと思っています」(ア・リーグ中地区球団スカウト)
吉井理人監督は復帰時期について「2カ月はかかるというのがお医者さんの話」と話していた。しかし、「完治=即登板」とはならないようだ。
「治ったと思っても、ちょっと怖くて引っ張るところなんで。しばらくはお休みです」
選手に無理をさせないのが吉井監督の信条だ。また痛めないか?という恐怖感が消えるまで、実戦登板させることはないだろう。米スカウトたちもそのあたりを気にしていた。
「復帰を急ぎ患部を庇って投げることで、フォームがおかしくならないかと心配しています。吉井監督のコメントの通りなら、その心配はないでしょうが」(前出・スカウト)
MLBのスカウトは佐々木が高校時代から追い掛けてきた。ダイナミックなフォームから繰り出される球質に一目惚れしたスカウトもいたそうだ。ただ、その当時から「いずれ左の脇腹を痛めそう」という懸念の声が出ていた。
それはNPB球団のスカウトも指摘していたことで、左足を胸のあたりまで上げる独特の投球フォームに原因があって、その勢いで投げ下ろすため、「脇腹や右肩に負担がかかっている」と不安視されていたのだ。
「メジャーリーグのマウンドは日本よりも硬くできています。それに近いのはエスコンフィールドです。あの球場はメジャーリーグの球場で使用されている『マウンドグレイ』という粘土チップでマウンドを造っているので」(スポーツ紙記者)
佐々木が今季中にエスコンフィールドで“メジャーの試運転”で投げることはなさそうだが、WBC二次ラウンドで投げているので、マウンドグレイとの相性は悪くないはずだ。MLBと同じWBC公式球も、馴染むまで「大変だった」と言っていたが、米スカウトたちは「問題ナシ。適応力は高い」と太鼓判を押している。
「WBC前の強化合宿でダルビッシュ有にスライダーの握り方をレクチャーされたんですよね。スライダーの軌道が昨季とは異なるし、ロッテ首脳陣が思っている以上に器用な投手なのかもしれませんよ」(米国人ライター)
あえてマイナス点を挙げれば、体の細さへの指摘が聞かれた。
「佐々木は『遊び球』が少ないんです。2ストライク後、ボール球を1、2球使ってから勝負球を投げるものですが、佐々木は2ストライクを取ったら、すぐ勝負球のフォークボールかストレートを投げ込んでいく。ロッテ首脳陣が『100球メド』と伝えているので、無駄球を省いているのかもしれません」(同前)
厳しい言い方をすれば「余裕がない」。今回の故障もそうだが、佐々木はまだ心身ともに発展途上にあるようだ。
スカウトの中には「こちらで育てるから1年でも早く」「万全を期しケガのリスクがなくなってから」という両方の声が混在しているそうだ。一日も早い快復を祈りたい。
(以下次回 飯山満/スポーツライター)