オールスターゲーム第2戦の試合途中(7月20日)、ア・リーグ中部地区球団のスカウトがこう言った。「彼がウワサワか!」——。北海道日本ハムファイターズ・上沢直之(29)は球宴第2戦で2番手としてマウンドに上がった。
セ・リーグの打者3人に対し、投じた球数は9球。ピッチャーゴロと凡フライ2つ。直球と多彩な変化球で相手打者に的を絞らせない投球スタイルが球宴でも発揮されたわけだが、前出の米スカウトはこう続けた。
「彼を評価する材料が少ないというのが、正直な話。個人的な感想になるが、制球力も高いし、ローテーションの4、5番手を争う力は持っていると思う。投球スタイルが岩隈久志に似ているね。これだけの好投手が通算でまだ70勝も挙げていないのはどうしてなんだい?」
今季は8月10日現在、7勝6敗、防御率3.17。前半戦で「100イニング投げる」という目標も掲げていたと言う。「MLB挑戦」の目標に向かって心身ともに充実しているようだが、右ヒジなどの故障でシーズンに集中できなかった時期もあった
「過去の故障歴を気にする声も聞かれました。でも、彼はスタミナはありそう。メジャーリーグでも最後にモノを言うのは体力と気力ですから」(米国人ライター)
全てを数値化するMLBらしくはないが、米スカウトたちは日本の投手をチェックする“追加項目”として、「夏場の投球内容」があるという。暑さのなかで球速が落ちていないかどうかなどもチェックするそうだ。
「前半戦最後の埼玉西武戦では8回を投げ、無失点でした。104球と少なめでまとめた投球技術はさすがだと思います」(前出・同)
少ない投球数で試合をまとめる力は評価されているようだ。
上沢がMLB挑戦の意向を球団に打ち明け、挑戦の時期などについて話し合ったのは、昨年オフの契約更改での席。過去、日本ハムは米球界挑戦の意向を持つ選手たちを応援してきた。上沢に対しても全面的にサポートしていくと思われるが、ダルビッシュ有、大谷翔平などの先輩たちは実績を積み上げ、シーズンで高い成績を残してから挑戦が具体化した。
そのことは米スカウトたちも分かっており、上沢については「日本ハムがいつゴーサインを出すのか、分からない」という言い方もしていた。
オールスターを観戦した米スカウトが「あれがウワサワか!」と話したのは、NPBでまだタイトルを獲っていないため、名前と顔が一致しなかったからだ。
「岩隈氏に似ている」「スタミナもある」と、米球界でやっていけると評価する関係者は少なくない。
(以下次回 飯山満/スポーツライター)