5月1日に経営破綻したことが明らかになった米国の大手地銀「ファースト・パブリック銀行」。同時に預金と資産をJPモルガン・チェースが買収したことも発表され混乱は回避されたが、同行の資産規模は全米14位(※22年12月時点)。
一連の金利引き上げによる破綻は、3月のシリコンバレー銀行(同16位)とシグネチャー銀行(同29位)に続く3行目でリーマンショック後最大の銀行破綻となる。
かねてより「景気後退は避けられない」と報じていた自国メディアに対し、バイデン大統領は一貫してこれを否定。だが、銀行の破綻という最悪の形でメディアの主張が正しかったことを裏付けた格好だ。
「リーマンショック後の好景気が長期間に及んだこと、さらに2020年以降はコロナ禍で世界経済が大きく停滞したこともあり、米国の景気後退は避けられない状況でした。とはいえ、深刻な経済危機に襲われているわけではありません」(経済誌記者)
確かに、5日に米労働省が発表した雇用統計では、前月比の非農業部門の就業者数はプラス25.3万人と大幅に増加。失業率も22年2月以降は3%台で推移している。
だが、大手ニュース専門放送局「CNBC」が4月に行った世論調査によると、米国経済について「現状および見通しともに悲観的」と回答した米国民は69%。この状況を「追い風」と見ているのが来年の大統領選への出馬を表明しているトランプ前大統領だ。
「記録的なインフレが続く米国では国民の怒りの矛先が現政権に向いています。一方、トランプ氏が大統領在任中、経済政策を評価する財界関係者や国民は多かった。彼はインフレ問題や銀行破綻についてバイデン大統領に責任があると批判しています。ただし、これらに関しては、トランプ政権時代の規制緩和が原因だと民主党側は主張しており、優勢とは言い切れない状況です」(経済誌記者)
いずれにしても、相次ぐ銀行破綻が次の大統領選の争点になるのは間違いなさそうだ。