南の楽園「バリ島」にロシア人3万人!「兵役逃れ」で入国し不法就労している

 東南アジアを代表するビーチリゾートの1つで、日本人にも人気のインドネシア・バリ島。日本ハムの新庄剛志監督が2020年まで約14年間住んでいたことでも知られるが、そんな南の楽園に現在、「異変」が生じている。それは3万人以上とも言われるロシア人の長期滞在者の存在だ。

 ウクライナへの軍事侵攻に対する抗議措置としてビザの発給を停止するなど、入国制限を設ける国が多いが、インドネシアはこうした規制を行っていない。だが、3万人にも及ぶロシア人は、バカンスのために訪れているわけではない。実は、そのほとんどが徴兵逃れの入国だという。

 昨年9月21日、プーチン大統領は事実上の徴兵にあたるロシア国民に対する部分的な動員を発表した。そのため、出国禁止になる前に国外に脱出するロシア人が急増したが、その受け皿の1つがバリ島だったのだ。

「インドネシアは、外交的には他のASEAN諸国同様、中立の立場で、ロシア人を歓迎しているわけではありません。ただ、同国は外国人のビザ延長が容易で物価も安いということもあり、ロシア人が集中してしまったようです」(現地在住ライター)

 ただし、バリ島に逃れたロシア人に安息が約束されるわけではない。クレジットカード大手のVISAとマスターがロシアで事業停止した影響で、ロシア人は国外でもカードが使えず、また経済制裁によって銀行口座の預金を引き出すこともできない。さらに、徴兵を拒否した者には厳罰が課せられるため、帰国もままならない。カザフスタンに「脱出」したものの逮捕されてしまったロシア人の1人は、参戦拒否容疑で起訴され、6年6月の懲役刑を下された。

「結局、滞在するにも金がなく、帰国することもできないロシア人が不法就労するケースが後を絶たないのです。インドネシア当局も対応に苦慮していますね」(前出・ライター)

 4月23日配信の「読売新聞オンライン」では、バリ州のワヤン・コステル州知事が、ロシア人に対する一部ビザの停止を政府に求めたと伝えている。

「ただし、インドネシア政府は静観の見通しで、ロシア人へのビザ発給が停止となる可能性は低いと見られています。一方でバリ島は観光客が戻ってきたことで求人は増えたものの、安い賃金で使える不法就労のロシア人を使う経営者も多く、地元民の間で不満が高まっています」(前出・ライター)

 ウクライナ戦争の余波が、南の島のリゾート地にも及んでいるのである。

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