ウクライナ兵斬首の「実行犯はワグネル兵」ロシア人権団体が断定した根拠

 はたして、この映像は本物なのかフェイクなのかーー。

 ロシア兵が若いウクライナ兵の首を生きたまま切り落としているとみられる動画がネット上に公開され、世界を震撼させている。これは4月11日夜、約30万人のフォロワーを持つ親ロシアの人気ブロガーがSNSのテレグラムにアップし、その後ツイッターで拡散されたもの。映像は約1分40秒で、迷彩服を着用したマスク姿の男が、男性を斬首する様子が映っている。

「殺害に及んだ男や周囲の男たちはみな足に白いバンドをつけており、これはロシア兵が識別のために使うもの。一方、斬首される男性はウクライナ兵が識別のためによく使う黄色の腕章をつけています。映像には男の1人が防弾ベストを持ち上げるシーンがあり、そこにはウクライナ国章が描かれたバッジとどくろマークらしきものがついていますが、バッジの色と形はウクライナ地上軍の徽章に似ています。さらに、地面にはパスポートのような緑色の冊子が見え、これも色や文字レイアウトからウクライナ軍の標準的な身分証IDと一致しています。つまりこの映像がフェイクでなければ、斬首された男性はウクライナ兵である可能性が極めて高いと思われます」(ロシアウォッチャー)

 撮影日時、場所は不明。だが粒子の粗さから携帯電話で撮影されたもので、映像にある木々の新緑からみて、撮影されたのは恐らく昨春遅くから夏にかけて。男たちは皆ロシア語を話しているが、とはいえ、多くのウクライナ人もロシア語を話すため、そこだけとって男たちがロシア兵だと断定できる決定的証拠ではないとされる。

「映像では男が斬首した後、頭部を『司令官に!』(届けろ)という声が聞こえます。仮にウクライナ兵が仲間割れで、同じウクライナ兵を斬首したとして、その首を司令官のもとに持っていくというのも不自然な話。そう考えると、男たちがロシア軍である可能性が高いと言わざるを得ないでしょう」(同)

 この動画を受けゼレンスキー大統領は12日、「世界の誰も無視できないことが起きている。けだものどもが簡単に人を殺すということだ。われわれは絶対に忘れない。殺人者を許すこともない」と戦争犯罪に対し、厳しい処罰を加える決意を表明。一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、「私たちは偽情報の世界に生きており、この動画の真偽を確認する必要がある」と、フェイクである可能性を示している。

 ところがそんな中、ロシアの人権団体「グラグ・ネット」が、ノルウェーに亡命したワグネル元兵士の証言により、斬首した男がワグネル兵士であることを断定した、と公表。同団体によれば、映像から聞こえるコールサインや話し方などで完全にワグネル兵士と識別したとして、現段階では個人の特定には至っていないが、今後3,000ユーロ(約44万円)の報酬と引き換えに広く情報提供を求めていくという。

 ワグネル率いるプリゴジン氏は「証拠がないデタラメ」との声明を発表しているが、金に目がくらんで仲間を売り渡す輩が出てくる可能性もあり、真相究明が待たれるばかりだ。

(灯倫太郎)

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