米国防総省の「機密文書流出」が世界で大きな問題となっている。
「流出が確認されたのは100ぺージ以上、数十件のテーマに関する文章と写真のファイルで、中身は例えばCIA(中央情報局)が世界各国の首脳の会話を盗聴するために、どうやって情報部員を募集して、どのようにある種の勢力を監視していたかといった情報が含まれていたため、国防総省は『極秘内容が含まれている』として調査を行っているところです。最初に事件を報じたのは4月6日のニューヨーク・タイムズでしたが、この時点で既にツイッターやテレグラム、アメリカの極右掲示板の『4chan』などにファイルや画像がアップされ、拡散してしまっていました」(全国紙記者)
アメリカの諜報活動の一端が流出してしまったのだから、アメリカが困るのは当然ながら、対象となった国も巻き込まれている。
「ワグネルがNATO加盟国から武器を購入するために重ねていた謀議をどう盗聴したかとか、アメリカがロシア軍の移動を衛星で追跡したといったウクライナ侵攻絡みのものも含まれていて、ウクライナに関してはゼレンスキー大統領の行動を監視していたとか、ロシアの軍事拠点の爆破を行うようアメリカが提案したなどといったものもあり、ウクライナは今後の軍事計画の変更を強いられるのでは、といった見方も出ています」(同)
ウクライナの政府関係者からは、文書流出をロシアによる偽情報工作の一環とする主張もあるが、中にはロシア軍の戦禍といったロシアにとって都合のよくない情報も含まれていて、ロシア陰謀説では簡単に片づけられそうにもない。果てはロシアの仕業に見せかけるウクライナによる逆工作との説まであるとか。
今回の件について、ロシア大統領宮のドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシアの仕業であるかについては「違う」と明確に否定しつつ、「この件についてのコメントはしない」とダンマリを決め込んでいるので、様々な思惑が広がる。
他にも中国や中東、アフリカの情勢に関するものもあって、特にエジプトは、ロシア向けに4万発のロケット弾を生産する計画があると記されたものもあって、現在火消しに追われている。
さて、問題はこの文書を誰が流出させ、どんな経緯で漏洩したかだが、経路に関してはゲームが元との報道もある。
「『ディスコード』というオンラインゲームにゲーマーがやり取りするチャットがあって、そこでウクライナ戦争についての議論が持ち上がった時にある男性がアップしたのが最初ではないかというところまで調査は進んでいるようです。ではハッキングによって得られたものか、それとも文書を閲覧できる立場にいた人間が持ち出したのかについては、そこはまだ不明で、様々な国や勢力の情報が含まれていることから、やはりアメリカ人によるものではないかという見立てがなされています」(外信部記者)
詳細は調査の結果を待つしかないが、その顛末はスパイ小説さながらのものか、はたまた事実は小説より奇なりというものになるか。
(猫間滋)