密告が奨励され、それこそ将軍様の陰口でも言おうものなら即刻通報され、当局によって逮捕・拘留。下手をすれば一族郎党、重罪に処されることもある、と言われる北朝鮮。
そんな北朝鮮で今、ある人物に対する猛烈な批判が巻き起こっているというのだ。
北朝鮮ウォッチャーが説明する。
「それが、最近頻繁に公の場に登場するようになった金正恩総書記の娘キム・ジュエ氏だというんです。北朝鮮北西部にある平安北道の住民の声を紹介した、米政府系メディア『ラジオ・フリー・アジア(RFA)』によれば、食糧難で餓死者が出る中、ほとんどの住民がやせ細っているにもかかわらず、『あの娘の満月のような顔はどういうことなんだ、一体何を食べていればあんなにふくよかになるんだ』と不満が続出しているのだとか。むろん、大っぴらにそんな批判をしたら逮捕されますが、RFAの取材の答えた住民は『口には出さないが、国民の大半がそう思っている。映像を観るたびに怒りがこみ上げてくる』と述べたというのです」
なるほど、たしかに2月8日の軍事パレードにしろ、17日のスポーツ競技観覧、25日のニュータウンの着工式現場でも、彼女はすべて“お嬢様ファッション”で登場。そして、正恩氏と瓜二つの顔は、丸々としていて、ふくよかそのものだ。
現在の北朝鮮は、1990年代半ばの大飢饉以降で最大の食糧難といわれ、韓国の「聯合ニュース」によれば、国が直接管理する特別市・開城市でさえ毎日数十人の餓死者が出て、金総書記が現地に側近を派遣。食糧を無料配給に切り替えたと報じている。
「これまでの餓死者は大半が地方だったこともあり、さすがに金総書記も驚いたのでしょうが、実は2月15日付けの『東亜日報』によれば、いままで最優先とされていた北朝鮮兵士への食糧配給も縮小され、配給量は一般市民レベルに落ちているといわれます。北朝鮮国内には食糧配給の優先順位があり、まずは軍隊や警察、労働党や役所の役人たちへの食料が確保され、そのあとに軍需工場の労働者、一般市民という序列。ところが慢性的な食糧不足に加え、コロナによる国境封鎖や経済制裁でにっちもさっちもいかなくなった。結局、下に行けば行くほど食料が行き届かなくなり、餓死者が急増する事態になってしまったんです」(同)
にもかかわらず、相変わらずミサイル発射に湯水のごとく金をつぎ込む金総書記に対し、国民の不満が鬱積。その批判の矛先が、金総書記の娘であるジュエ氏のふくよかな顔と、そのお嬢様ファッションに向けられたということだろう。
いずれにせよ、国民感情が爆発寸前とされる北朝鮮国民の苦難はまだまだ続きそうだ。
(灯倫太郎)