「うちは凄いのを持っているんだぞ!」またぞろ、猛烈なアピールが始まったようだ。
18日午後、北朝鮮が平壌近郊から大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。ミサイルは北海道・渡島大島沖約200キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下。20日にも短距離弾道ミサイルを発射するなど、北朝鮮が軍事的挑発をエスカレートさせている。
今回発射されたICBMは最高高度6000キロ。これは日本・ハワイ間の距離に匹敵し、斜めに打ち上げればアメリカ本土までカバーできるとして、20日に談話を発表した金正恩総書記の妹・金与正党副部長も「太平洋を我々の射撃場に活用する頻度は、米軍の行動の性格次第だ」と、“オラオラ系”の恫喝を繰り出し鼻息が荒い。
今回のミサイル発射は、22日に米ワシントンで米韓が行う北朝鮮核問題に対応するための机上演習「拡大抑止手段運営演習(DSC TTX)」及び、来月の合同軍事演習に対抗するものだが、大気圏再突入に失敗したとの指摘がある一方、与正氏は「我々は満足した技術と能力を保有しており、これからはその数を増やすことに注力する」と再突入成功を主張、いつもにも増して強気の姿勢を見せている。
その背景にあるのが、今回のICBM発射成功で北朝鮮の持つ高度なミサイル発射技術が他国にアピールされ、受注拡大の可能性が出てきたからではないか、というのが北朝鮮ウォッチャーだ。
「北朝鮮の場合、核爆弾の技術は不透明ですが、ミサイルを飛ばす技術はトップレベルにあるといわれ、過去にも自国生産したミサイルを中東諸国に輸出してきました。今回もその高い技術力が証明された形で、そうなれば間違いなく海外からのニーズは増え、それを売れば莫大な外貨を手に入れることができる。だからこそ、国民が食糧難にあえごうが餓死者が出ようが、ミサイルだけは飛ばし続けなければならないのです。当然、実験による各国への営業はまだまだ続くとみられます」
そして現在、北朝鮮が積極的に営業をかけているのが、ロシアだというのだ。
「米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が17日に発表した報告書によれば、昨年11月以降、ロシアと北朝鮮の鉄道による貿易が急増し、北朝鮮が国境付近にあるロシアの石油製品貯蔵施設から石油を輸入するなど、両国の関係強化が一気に進んでいることを示唆しています。しかも11月と言えば、ロシアの民間軍事会社『ワグネル』がこの鉄道を利用して、砲弾などの兵器をコンテナで輸送した時期。専門家の中には、北朝鮮がミサイルの運用で外貨を稼ぐことで、これまでの中国依存から徐々に中国の影響力を排除する方向を画策しているのでは、という意見もあります。そして、新たに手を組みたいと考える相手がロシアだと。というのも、ロシアは経済制裁を受け国際社会で孤立しているように見えても、資源があるため、エネルギー問題で結局は優位な状況にたっている。なので、北朝鮮としてはロシアと今まで以上に深い結び付きを持ちたい。中国といきなり距離を置くということはないにせよ、ミサイルを通して北朝鮮がロシアとの関係を強化していくことは間違いないでしょうね」(同)
はたして、与正氏の強気な姿勢と余裕ともとれる表情の背景にあるものは…。
(灯倫太郎)