NHKの集金に対しては「テレビを置いていない・見ていない」のが最大の対抗策となるが、「テレビを全く、あるいはほとんど見ない」人に対してもNHKは影響力を及ぼそうとしている。しかも「総務省からの要請」という建前の「社会実証」として。
「NHKは2月10日から24日までの2週間、テレビの保有・非保有に関わらず全体の約20%を占める、1日にテレビを1時間以上見ない『テレビを全く、あるいはほとんど見ない』人に対し、サイトやアプリを通じて様々なサービスを提供。使用結果をアンケート調査し、デジタル時代にどのようなサービスが望まれるかを調査しようというものです」(全国紙記者)
具体的にはNHKの同時配信・見逃し配信のNHKプラスやウェブページで主要ニュースに新たな価値を加えたものを提供したり、ニュースの信頼性の課題等をアラート(フェイクアラート)、災害情報の可視化(災害マップ)、地域ニュースの充実(地域ニュース)といったサービスを提供。テレビを持っていない・見ない人に、①「正しい理解がっ広まり、気付く」、②「知識が広がり、つながる」、③「簡単に、必要な情報が見つかる」の3点でどれだけ有用なものを届けられるかを調査するというものだ。
だが実はこれ、「第1期」の実証は既に昨年4〜5月の2週間に終わっていて、①〜③の3点共に約7割の人から高評価を得たという結果が報告されている。だから今回の実験は、もともと計画されていた「使い勝手」をはかる「第2期」の調査となる。
しかもこの調査、先述したように「総務省からの要請」で行われたことになっており、実証に関する資料には「社会実証で目指すこと」として、「情報空間におけるNHKの意義、存在価値の確認」が大きく掲げられているのだから、全ての建て付けが「テレビでないネット時代でもNHKは必要」と結論付けることで進められていることになる。あくまで「実証」であって「実験」ではないところにもそれは表れていて、結局は、NHKが現在推し進めている「ネットの本来業務化」のための布石の1つということが分かる。そしてその先にあるのは「ネット受信料」徴収だ。
「民放の見逃しサイトのTVerでもNHKは見られますが受信契約の対象ではなく、NHKの見逃しサイトNHKプラスは受信契約者しか使えないのが現状です。ですから現状はネットがつながるからという理由だけで受信料を徴収するのは難しい。しかしネットがNHKの本来業務として認められてその幅が大きく広がれば、テレビを持っていない・見ていないという理屈は通用しなくなるかもしれません」(同)
そしてそのための検証が総務省の要請で「実証」されているとしたら、これではまるで結論ありきの「出来レース」のようなものではないか。
(猫間滋)