「値上げしない」攻めのサイゼリヤがついに「未踏の地・青森」に出店の勝算

「一番に言わなければいけないのは、値上げをしないということだ」

 昨年9月1日にサイゼリヤの社長に就任した松谷秀治氏は、10月の会見の冒頭でこう宣言した。ロシアによるウクライナ侵攻で輸入小麦などの原材料費が高騰する中、とりわけ影響が大きいと見られるイタリアンで価格据え置きを宣言したことで、サイゼリアは一般ユーザーの喝采を浴びた。

 そんな攻めの姿勢の表れか、サイゼリヤがとうとう「未踏の地・青森」に出店するという。

「青森県は全国的な飲食チェーンにとっては出店が最後に残る困難な土地となっています。有名どころでも、あの松屋でさえ21年に進出したくらいです。最近ではコメダ珈琲と星乃珈琲店が19年に、いきなりステーキは18年に進出していましたが、ファミレスにとっては特に距離感が重く、デニーズやジョナサン、ロイヤルホストなど代表的なチェーン店の進出は見られていません」(経済ジャーナリスト)

 青森県への進出が遅くなる理由は、本州最北端なので物流に時間とコストがかかるのが一番の理由。つまりは距離の問題だ。だがそれだけではない。人口減少が激しく、また青森県の中でも大きな青森・弘前・八戸の3大都市を合わせても人口が約66万人ほどで、1つ1つの規模が小さく地理的にも分散しているという、人口密集度の問題もあるという。総じてコストの割に採算が見合わないということだろう。

 そんな中2月1日、サイゼリヤが五所川原市に出店とのリリースがなされた。これでサイゼは東北全県制覇になるという。ちなみに出店先はELMという商業施設で、どうやら「エルム」と読むらしい。

 となると当然ネットやSNSでは歓喜の声が上がっている。だが、青森市から車で1時間前後かかる五所川原市であることに、地元では「なんで五所?」との声も上がる。あるいは「(サイゼの)すごさが分からない」といった声も。

 それはそうだ。サイゼでは「デートでの使用はアリかナシか」論争が高まったことがあるが、そんなことに熱を上げるのも身近にあってこそ。青森の人にとっては対岸の火事のようなもので、逆に言えば「コップの中の嵐」とでも言うべき、とるにたらない論争だったということなのかもしれない。

(猫間滋)

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