テスラの自動運転動画はヤラセ!? また個人資産が減りそうなイーロン・マスクの苦境

 テスラの公式サイトに掲載されている電動SUV「モデルX」が自動運転をする様子を収めた動画は、実際にはヤラセで演出されたものだったとロイター通信が報じた。動画は同社のイーロン・マスクCEOの指示で撮影されたものだといい、同氏にはまたも批判が殺到しそうだ。

「問題の動画では、冒頭に『運転席に座っている人は法的な理由でそこにいるだけで、彼は何もしていません。車は自分で運転しています』というテロップが表示され、モデルXが自動で運転する様子が収められています。ドライバーがハンドルを握らずT字路を合流、赤信号で車を停車したりハイウェイを走行し、最後はドライバーが降りた状態で狭いスペースに縦列駐車を成功させ、動画は終了するのです」(カー雑誌ライター)

 しかし、2018年に起きたオートパイロット死亡事故による裁判で、テスラ社のアショク・エルスワミ氏が証言したところによると、この動画は顧客が実際に体験できるものを撮影したわけではなく、あくまで製造することが可能な技術を示したものだったという。そのため車は事前に決めたルートをプログラムで走っていただけで、赤信号で止まることもできず、撮影中には接触事故も起こしていたが、その部分は削除されたのだとか。

「この動画が公開された直後、マスク氏は『テスラ車はドライバーが手を触れずとも走行することができる』と自慢気にツイートしていましたが、今回の証言が事実だとすれば、すべてはヤラセだったということになります。テスラ車の自動運転による事故は世界中で続出しており、ここ数カ月だけでも中国で5人が死傷した暴走事故や米サンフランシスコで7台が玉突きになる事故も起きている。それにもかかわらず現時点(1月25日)でも米公式サイトに誤解を招くような自動運転動画を掲載し続けているのは、さすがに問題があると言わざるを得ないでしょう」(モータージャーナリスト)

 今年に入り、マスク氏は史上もっとも個人資産を失ったとしてギネス世界記録に認定されたが、テスラへの批判が強まればこの記録を更新してしまうかもしれない。

(小林洋三)

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