W杯で日本が大金星を挙げた相手のドイツ代表は、中心選手のほとんどが国内リーグのブンデスリーガの強豪バイエルン・ミュンヘン所属だ。バイエルンは目下ブンデスリーガ10連覇中という驚異のチームで、日本で言えばかつてのV9の巨人軍といったところか。19−20年シーズンには、ヨーロッパのクラブNO.1を決めるチャンピオンズ・リーグを制してヨーロッパ・チャンピオンになっている。
これと同じようなチームがイタリアの名門ユヴェントスだ。こちらは国内9連覇中で、だいぶ時代は遡るが、やはり95−96年シーズンには、あのフランスの名選手ジネディーヌ・ジダンを擁してヨーロッパ・チャンピオンになっている。
ところがW杯を過去に3度制しているイタリアは、予選敗退で本大会には出ていない。それだけヨーロッパ予選を勝ち抜くのは難しいということなのだが、このW杯期間中にイタリア・サッカー界に本大会不出場に追い打ちをかけるような激震が走った。
「11月29日、ユヴェントスはかねてから偽計会計や不正なキャピタルゲインでトリノ検察の取り調べを受けていたのですが、この件を受けて、会長以下役員全員が辞任すると発表したのです。オーナー家の会長が辞任したのは国内的には大きな話題なのでしょうが、サッカーファン的には副会長のパベル・ネドベドの名前がお馴染みでしょう。チェコ出身で長くユヴェントスでプレーした名選手で、03年には年間世界最優秀選手のバロンドールを受賞したことがあるくらいですからね」(サッカーライター)
そこで当然サッカー・ファンの間で関心が向くのが今後の捜査の行方ということになるのだが、最も心配されるのはリーグの降格だろう。
「ユヴェントスはリーグ連覇中の06年に審判への買収・脅迫行為が発覚して、連覇した王者の地位をはく奪された上に、2部リーグのセリエBに降格させられたのです。この時はイタリア代表FWでユヴェントスの顔だったアレッサンドロ・デル・ピエロがいち早く残留の意向を示したことから、ネドベドや代表GKのジャンルイジ・ブッフォンといった主力もクラブに残りました」(同)
この時はデル・ピエロのクラブへの忠誠心の賜物といった美談で語られた一方、ネドベドを含めて多額の契約金が残っていたからという説もあった。そしてまたもや降格になったらどうかといえば、正直言って他の選手を引き留めるようなクラブの顔といった選手は特に見当たらないし、そもそもイタリア人があまりいない。
一方、さすがユヴェントスの選手だけあって、中でも有名なアルゼンチン代表のアンヘル・ディ・マリアを筆頭に、ブラジル、アルゼンチン、セルビア、アメリカ、ポーランドの代表選手が名を連ねていて、彼らは現在W杯を戦っている。
もともとW杯は野心的な選手が世界市場に顔を売る場でもあるが、特に彼らにとっては再就職先へのアピールの場といった意味合いが強くなるかもしれない。
(猫間滋)