国際的にも遅れたデジタル化を進めるべく政府が推進しているのが、マイナンバーカードの普及だ。保険証の機能を持たせて従来の保険証は24年秋を目途に廃止すると河野太郎デジタル相が発表すると「強制だ!」との批判が高まり、岸田首相は「カードを持たない制度も」との“並存策”を打ち出して火消し。だが結局は「どっちつかず!」と批判を浴び、火を消すどころか油を注ぐ形になってしまったが、それでもマイナポイントの付与を年内いっぱいまで延長させる“アメ”を配りつつ、保険証を廃止した後には24年度中に運転免許証と一体化させ、25年度に在留カードとも一体化を図る予定で事が進められている。
ところがこの何かと議論を呼ぶことの多いマイナンバーカードに、今度は同じ官庁である財務省からもケチがつけられた。
「財務省の諮問機関である財政制度等審議会が11月14日に行った部会の会合で、現行のマイナンバーカードの関連システムの構成が古く、そのために毎年数百億円規模の経費が発生しているとの指摘が上がったのです。確かにマイナンバーカードの管理システム関連予算は21年度が113億円だったのに対し、22年度は290億円で2.6倍も増えています。会合ではその理由についても指摘されていますが、それによれば、特定のベンダーの製品や開発に偏っているからなんだそうです」(経済ジャーナリスト)
となれば各種情報の統合もいったん見直すべきではないか。仮に統合は行うにしても、現行のシステムは見直されなければならないだろう。川上でダムの水がダダ漏れになっているのだとすれば、川下を広げればそれだけムダな水が流れ続けることになってしまうではないか。
「マイナンバーカードに関しては、地方公共団体情報システム機構(J−LIS)という総務省の外郭団体が担っています。同機構に関しては、過去に全国20の政令指定都市が14、15年の2年間で124億円の業務委託費を言い値で支払っていたことが判明して批判の声が上がっていました。何しろマイナンバーのシステムに関しては同機構が一手に担っているので逆らうわけにもいかなかったのかもしれませんが、そんなところに無検証で任せていたからシステム構築にろくすっぽ競争原理も働かずに随意で特定ベンダーに任せていたのでしょう」(同)
表向きはデジタル化と言いながら、裏では金食い虫の天下り利権が出来上がっていたのか。極めてアナクロな霞が関の伝統芸を見せられれば、それはもう呆れるほかはない。
(猫間滋)