11月20日にまとめられた財務省の審議会の答申で注目されたのは、医師の収入の増加について言及している点だった。そして、診療所における診療単価の「引き下げ」の数値が具体的に盛り込まれたのである。
「財務省では次年度の予算について議論する『財政制度等審議会』を設けていて、ここで出された意見が国の財政制度のあり方としてまとめられます。それが『建議』として鈴木俊一財務大臣に手渡されたのですが、中身の目玉とされたのが、診療所の診療単価の引き下げだったのです」(経済ジャーナリスト)
財務省が全国の財務局を使って調査したところ、入院機能のない診療所約1万8000カ所の平均経常利益率が、2020年度の3%から2022年度は8.8%へ急増しており、これは20以上の病床を持つ病院の5%より高く、全産業やサービス産業の3.1~3.4%を大幅に上回っているという。これは診療所の院長の給与を差し引いた数字であり、財務省は「異例の高さだ」と指摘するのだ。
実際にどのくらい「儲けて」いるのかというと、厚労省の「医療経済実態調査」によれば、開業医の平均年収は約2800万円で、税引後の手取りで1675万円とある。ただ、勤務医だと年収約1500万円で手取りは1075万円となり、600万円の差がある。それでも一般の自営業やサラリーマンと比べれば十分高いことがわかる。ちなみに開業医の中でもトップ3は、小児科、整形外科、皮膚科で、ワーストは眼科だ。
「こうした『開業医が儲けすぎている』とも言えるような状況を鑑みて、審議会では全産業やサービス産業の経常利益率に合わせて、診療所の報酬単価を5.5%程度へ引き下げるよう求めています。ただ、直近の3年間はコロナ禍であり、経常利益率の急上昇は一過性のものとする意見もあります。また、一般病院は今後赤字が拡大し利益率も落ち込むとの見込みもあり、日本医師会は医療従事者への賃上げの原資として逆に報酬の引き上げを要望。財務省と医師会が真っ向から対立している形です」(前出・ジャーナリスト)
診療報酬は2年ごとに改定され、24年が改定年度となる。診療報酬の改定率は予算編成を通じて内閣が決定するのだが、審議会の主張がすんなりと通るかどうかは未知数なのである。
(猫間滋)