いよいよ、日中首脳会談が2019年12月以来、約3年ぶりに対面で実現する運びとなった。
14日の会見で松野官房長官は、岸田首相と中国の習近平国家主席が、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、17日にバンコクで会談することが決まったと発表。岸田氏は現在、国際会議に出席するため東南アジアを歴訪中だが、9月末、日中両国は国交正常化50年の節目を迎えたこともあり、13日には記者団に対し「日中の間には可能性があるとともに課題や懸案もある。対話を前進させる会談にしたい」とコメントしていた。
「会談が実現すれば当然、尖閣諸島をめぐる問題や台湾情勢、北朝鮮のミサイル発射、日中の安定的な関係構築など、様々な事項がテーマになる見通しです。日本側の考えをしっかり主張しながら、日中関係を再構築するという難しい会談になりそうで、岸田首相の外交手腕が求められます」(全国紙政治部記者)
ところが日中首脳会談に向け、政府が水面下で事前調整するなか、またもやあの人が「問題ある発言」をしたとして、政府与党関係者の間で波紋が広がっているという。
「あの人とはズバリ、鳩山由紀夫元首相のことです。鳩山氏は10月下旬、新華社の単独インタビューに応じ、現在、世界は地政学的な対立を抱え、新型コロナウイルス感染症など未曽有の困難に直面しているとした上で、『世界各国の運命はつながっており、一国の危機が他国に波及する。(習近平氏が掲げる)人類運命共同体構築の理念は極めて重要で、極めて正しい』と称賛。一帯一路政策にも『人類運命共同体を構築する重要な道』であると猛プッシュしているんです。鳩山氏と言えば、これまで度々中国寄りの発言を繰り返したことで知られていますが、さすがに首脳会談を前にしたこのタイミングでの発言はまずいだろと、与党内でも問題視されているようです」(同)
鳩山氏は、09年9月から10年6月まで首相を務め、現在は東アジア共同体研究所理事長として、アジア諸国との友好と交流・協力の促進に尽力してきたとされるが、一方で13年1月には、南京大虐殺記念館や重慶大爆撃遺跡を訪れて謝罪、日本政府から批判を受けたこともあった。
さらに近年では21年8月、人民網日本語版に掲載された程永華元駐日大使との間で交わした発言が「衝撃的」として批判を受けたこともあった。
「大使との会談の中で同氏は『過去一世紀を振り返ると、日本による不幸な侵略があった。そういったものをはじめ、中国は極めて大きな困難に直面したが、その度に中国共産党が人民とともに困難を克服してきた。そのことに対して最大限の敬意を表する』『中国共産党は結党以来、巨大な人口、国土、そして民族的多様性を抱えた国家を一つにまとめ上げ、そのことによって人民の生活を向上させてきた。そのことは大変大きな立派な歴史的な事実であって、世界的にもっと評価をされるべきことではないか』などと述べている。同年12月に中国で開かれた国際フォーラムにオンラインで出席した際には『中国に謝罪して、日本政府に批判された』と発言、さらにひんしゅくを買ったこともあります」(同)
退任したとはいえ、そこはやはり第93代内閣総理大臣だ。誰も猫の首に鈴は付けられないのか、このタイミングでまたも中国寄りの発言をする鳩山氏に、与党関係者も頭を悩ませている。
(灯倫太郎)