主力が抜けてナゼ勝てた?「横浜F・マリノス」3年ぶりのJ1優勝の理由

 今季のJ1の優勝は最終戦までもつれ込み、横浜F・マリノスが神戸を3-1で破り3年ぶり5度目の優勝を飾った。

 その要因となったのはフロントの的確な補強とケヴィン・マスカット監督の手腕。つまりチーム力の勝利だったといえる。

 今季の横浜FMはメンバーの入れ替えが激しかった。シーズン前に得点王に輝いた前田大然がセルティックに移籍。攻守の要だったボランチの扇原貴宏が神戸に、天野純も韓国のKリーグに移籍した。最終ラインでもタイ代表のキャプテンだった左サイドバックのティーラトン・ブンマタンがタイに戻り、開幕2週間前にはセンターバックのチアゴ・マルチンスがニューヨーク・シティFCに移籍。

 フィールドプレーヤーの主力の半分がチームを去った。それでもフロントは的確な補強をした。前田、天野の抜けた攻撃陣に仙台から西村拓真、そして札幌でプレーした経験のあるアンデルソン・ロペスを獲得して埋め、扇原の抜けたボランチにはパリ五輪の中心選手として期待されている藤田譲瑠チマを獲得。ティーラトンの代わりには鹿島から永戸勝也を獲得した。そして開幕直前にチームを去ったチアゴ・マルティンスの抜けた穴も急遽、鳥栖からエドゥアルドを補強。

 もちろん、すぐにチームにフィットしたわけではない。特に鳥栖で開幕を目指していたエドゥアルドは、開幕から決定的なミスをするなどしてベンチからも外されることがあった。それでも夏以降は最終ラインの中心として活躍した。

 横浜FMの強さは誰が先発しても同じようなレベルで試合ができること。途中から出場する選手もレベルは変わらない。しかもシーズンの終盤には、ベンチに仲川輝人、マルコス・ジュニオールや畠中槙之輔といった3年前に優勝したときの得点王や守備の要が控えるほどの選手層があった。それはマスカット監督の手腕の凄さだろう。

 ただリーグ戦では安定した力を発揮したが、ACLでは格下の神戸に敗れ、天皇杯、ルヴァンカップも決勝に進出できなかった。来季は複数のタイトルを獲ることが目標になる。そのためには現状維持では無理、選手の入れ替えが必要になってくる。ストーブリーグでどんな動きを見せるか。
 
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。

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