東京商工リサーチによると、主な居酒屋チェーン店337社の最新期決算で、2021年4月〜22年3月の売上高の合計が3454億2900万円となり、コロナ禍前の19年度の8011億1500万円から半分以下に減少していることが明らかとなった。
「21年度は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令が相次いだこともあり、居酒屋は時短営業や休業を余儀なくされたことが大幅な売上減の原因といえます。しかし、日本フードサービス協会によると、今年8月の居酒屋業態の売上高は19年の同月比で42.9%でした。まん延防止等重点措置が完全解除された3月以降も客足は戻っていないのです。他の飲食業と比較しても居酒屋が圧倒的に悪い状況で、閉店や倒産も収まる気配がありません」(経営コンサルタント)
入国制限の緩和や全国旅行支援など経済活発化に向けての明るいニュースもある中、それでも居酒屋の客足の戻りは鈍いと見られている。そして、その原因は、コロナだけではない、別のもっと深刻な理由があるという。
「若者を中心とした飲酒に対する意識の変化です。厚生労働省が実施している『国民健康・栄養調査』の最も新しい19年のデータでは、20代で飲酒習慣がある人は7.8%、30代でも17.2%でした。これは、1996年の調査と比較して20代で約3分の1、30代でも約2分の1にまで減っているのです。コロナ禍前から若者のアルコール離れが指摘されていましたが、習慣的にお酒を飲む人が減っているわけです」(前出・経営コンサルタント)
今の若者は、飲めないのではなく「あえて飲まない」のだという。
「最近は合理的な考えをする人が増えていると言われますが、それは酒に対しても同じで、《飲むと体によくない》《他の作業をする際のパフォーマンスが低下する》《二日酔いになればコンディションが悪くなり、時間がもったいない》などと考える傾向にあるのです。それがコロナ禍になったことで酒の席が減ったり、断りやすくなったことで、より顕著に出てきたのでしょう。将来の需要までを考慮に入れるなら、若者の居酒屋離れの深刻さは、コロナの比ではないのかもしれません」(ライフメディアライター)
今後、コロナが収束していっても、酒に酔うことを「コスパが悪い」と若者たちが感じているうちは、居酒屋にかつての賑わいが戻ることはないのかもしれない。
(小林洋三)