漫才頂上決戦「M-1グランプリ」から、これまでに17組のチャンピオンが誕生している。その中でも、20年に優勝したマヂカルラブリーの野田クリスタルほど、儲かっている王者はいないかもしれない。同年春には、ピン芸人日本一を決める「R-1ぐらんぷり 2020」でも優勝。ダブルで賞金を手に入れたが、それだけではない。
21年には、マッチョ芸人たちがトレーナーとなって教えるサポートジム「クリスタルジム」を、都内新宿にオープンさせている。M-1獲得以降は多忙のあまり、趣味の筋トレに時間を割けなくなり、体を鍛えるには仕事にするしかないとの発想の転換で吉本興業に相談。空き店舗の確保と同時に開店にこぎつけ、自身は「ジム長」のポストに収まった。
これだけに終わらない。「R-1」を獲ったのは、かねてから趣味だったゲームプログラミングをベースにしたネタ。独学と思えない出来のよさから商品化の依頼が届く。任天堂Switchから「スーパー野田ゲーPARTY」として発売されると、10万本を超えるメガヒットとなった。今年7月28日には、最新作「スーパー野田ゲーWORLD」をリリース。売り上げランキングで最高位2位につけ、連続で好セールスを記録した。
本業と副業で荒稼ぎする野田。そんな多芸多才に肉薄するM-1王者がいる。笑い飯の哲夫だ。「M-1」には02年から9年連続で決勝戦に進出した最多記録保持者。ラストイヤーとなる10年に優勝して、文字どおり有終の美を飾った。
哲夫は、出身地の奈良県でトップの公立校として知られる奈良高等学校出身。関西学院大学文学部哲学科に進学後に教員免許を取得して、塾講師のアルバイトをしていた。この才能は芸人になってからも買われ、東京大学で仏教講座を開催。NHK総合の哲学教養番組に出演したこともある。20年からは、相愛大学で人文学部の客員教授を務めている。
「8年ほど前からは、大阪府内で学習塾『寺子屋こやや』を経営しています。家庭の事情で塾に通えない子どもたちのために、低価格学習の提供をモットーにしています。小学1年生から中学3年生まで、40人ほどの生徒が在籍。講師陣には、塾講師の経験芸人がいます。空き時間があれば、哲夫さん自ら教鞭をとるとか」（週刊誌記者）
哲夫は、奈良県で奈良国立博物館の文化大使、奈良県桜井市の広報大使を務めている。実家の畑では農業もしており、20種類以上の野菜を育てて、販売もしている。
長所を生かして多方面で活躍する漫才最強王者。今年の末にも、がっぽりチャンピオンが誕生するか!?
（北村ともこ）
