不動産バブル崩壊!今年3度目の利下げが証明する「どん底の中国経済」

 中国人民銀行(中央銀行)が22日、事実上の政策金利に当たる最優遇貸出金利(ローンプライムレート=LPR)を引き下げた。企業に貸し出す金利の目安となる1年物は0.05%引き下げ3.65%に、住宅ローンなどに影響する5年超の金利は0.15%下げて4.45%に設定した。利下げは今年3回目となる。
 
 これは、中国経済がいよいよ土壇場に追い込まれていることを示すものだ。
 
 中国政府は2021年12月にも、コロナ禍で落ち込んだ経済を立て直すために、LPR1年物の金利を0.05%引き下げて、景気刺激を狙った。だが、景気の回復は期待を裏切り続けたため、今年1月に続いて5月には5年超の利下げを行い、さらに今回の3度目の利下げは2つのLPRを同時に引き下げた。
 
 度々の追加利下げは、中国政府が経済停滞から抜け出せない危機的状況にあることを強く映し出している。
 
 新型コロナの感染が止まったかに見えても、他の都市で再び広がり、移動制限が各地で厳しくなっているため、経済が上昇軌道にのらないのだ。
 
 8月に入っても景気回復はもたつき、中国政府が期待する「年後半の回復シナリオ」はまったく見えてこない。こうした状況の中、利下げがとれだけ経済効果を生むのか。
 
 中国は一昨年から不動産バブルが限界に達しているので、共産党政府のお家芸である固定資産投資(マンション建設や高速鉄道、高速道路などのインフラ投資)を続けるわけにはいかなくなっていた。
 
 例えば国際空港だ。中国じゅうに網の目のように航空路線が張り巡らされているが、1日1便しか発着しない空港は珍しくない。また高速道路は、中国西部のウルムチやヒマヤラ山脈に連なるチベット地域へも何本もの高速道路が貫いている。高速鉄道にしても乗客のいない赤字路線が続出している。
 
 しかし、利下げは不動産業界に「干天の慈雨」のような効果を与えてしまい、実質破綻(ゾンビ)企業を延命させてしまう。これは、習近平政府が抱える最大の暗部だ。
 
 今回の金利引き下げは、企業や個人の資金需要を刺激し、一時的に消費経済を活発化させるという神業のような政策なのだ。
 
 もともと中国政府は2022年の成長率目標を「5.5%前後」に設定していたが、経済減速が続いているために、その達成は完全に不可能になった。
 
 中国国内でも「ゼロコロナ」政策への反発は強いが、秋の中国共産党大会で、国家主席の3期目続投を目指しているとされる習近平氏は、世界に宣言した「ゼロコロナ」と、中国製ワクチンの優秀さの看板を放棄することは、国内秩序を保つ意味からもできない。
 
 いずれであれ、都市封鎖で中国国内の生産活動や消費が落ち込んだことが大きく響いた。今後、輸出産業向けの部品や原料生産は回復すると見られるが、中国の国内消費に関連する産業が回復するかどうかは不透明だ。

(団勇人・ジャーナリスト)

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