かつて大阪は「天下の台所」と呼ばれ、「京都の着倒れ、大阪の食い倒れ」と言われたように「食」を象徴する土地の代表格なのだが、その大阪を世界に発信する場であるはずだった25年開催予定の「大阪・関西万博」では、肝心な「食」が抜け落ちるという。
「大阪外食産業協会は、大阪府を中心にレストランチェーンや飲料、業務用厨房機器メーカーなど537社(3月末)が加盟する一般社団法人で、25年の万博では民間パビリオンを出すことで内定していました。ところが資金不足から、パビリオンの出展を辞退することが8月5日の理事会で決まったということです」(経済ジャーナリスト)
万博では2月に民間パビリオンの出展者が内定してから、5月には東京で発表会を行い、パナソニックといった関西由来企業が参加し、あの吉本興業は笑いで関西をアピール。他にもバンダイナムコがガンダムのパビリオンを出展して、メタバースで新たな世界観を打ち出すなど、華やかな話題が持ち上がっていたのだが、大阪外食産業協会は発表会を欠席して不透明感が高まっていた。そして結局は辞退に至ったというのだ。
「内定が決まった2月はロシアがウクライナに侵攻したタイミングです。それまではコロナが外食産業にダメージを与え、コロナが落ち着きを見せると今度は急激な需要増から小麦粉価格の値上げが大阪の粉物文化にダメージを与えていました。そこにさらにウクライナ侵攻が加わって、資源や原材料価格が高騰。パビリオンの建設資材費も、ただでさえ数十億円規模とされる各出展者の足かせになっていましたが、それら二重苦三重苦のダメージから抜け出すことは出来なかったということでしょう」(同)
70年の大阪万博では28の民間パビリオンが出展されたが、今回は13と半数以下だったところに1つ抜けるというのだから、その穴埋めは全体にも影響する。今後は物価高倒産も起きるだろうから、陰に陽に万博にも影を落としそうだ。
いずれにせよ、大阪の万博で「食」が抜け落ちるというのは何とも寂しい限りである。
(猫間滋)