安倍氏銃撃現場は今…わかってきた「警備失態」と「観光スポット化」への困惑

 安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃され、死亡した事件から今月8日で、1カ月が経過した。現場となった奈良市の近鉄大和西大寺駅周辺には今なお、安倍氏の死を悼む人々の姿が絶えない。

 そんな中、毎日新聞が奈良県警から聞き取ったという、当日の警備状況を伝えたのは3日のこと。記事によれば、当日現場で警備に当たっていた警察官は十数人。そのうち安倍氏が演説していたガードレール内に警視庁から派遣されたSPを含む4人の警察官が配置され、うち1人が後方警戒を担当していたという。

「事件当時、安倍氏の前方には300人ほどの聴衆がいたのですが、後方には人はほとんどいなかった。そのため配置されていたのは私服警官だけで、制服警察官は1人も配置されなかったといいます。また、ガードレール内で後方を警戒していた警察官も、安倍氏の前方右側の聴衆が増えたことで、後方だけでなく聴衆側の動きも追うことになり、結果的に前方に警戒が集中。後方から近づく山上容疑者の動きに気づけないという状況を作り出してしまった。毎日新聞は『奈良県警の警護計画では後方から銃撃されることへの危機感が薄く、警察官の数や配置に問題があったとみられる』と断じていますが、やはり奈良県警の警備体制の不備は否めないでしょう」(テレビ局報道部記者)

 警察庁では、警備の問題点などを調査する「検証・見直しチーム」を組織、今月中にも検証結果をまとめ、再発防止策を作る方針だという。一方、献花台が撤去された現場には、静かに手を合わせる家族連れなどのほか、山上容疑者が発砲した弾痕が残る近くの立体駐車場を撮影しに訪れる人々の姿も。

 7日配信の週刊女性プライムによると、銃撃現場から90m離れた商業施設の立体駐車場の外壁に弾痕が残っており、若者から高齢者まで次々に撮影に訪れているという。その様子は観光スポットさながらで、「現場に手を合わせてから、ここも撮影しておこうと思って。テレビで見たよりも小さい穴やった。画像は家族や友人に見せる用です」という大阪府から仕事で来ていた50代男性の談話を紹介していた。前出のテレビ局報道部記者も、

「献花台があった頃も、献花のついでにちょっと離れた複合商業施設まで足を延ばして、食事のついでに“事件の痕跡”を見物したり、撮影する人はいたようです。ただ観光地化というのは違和感がありますね。一国の元首相が命を落としている場所ですから…」

 訪れる人は、そこが悲劇の現場であることを忘れてはならない。

(灯倫太郎)

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