窮地のHISがハウステンボス売却へ!澤田会長が巻き込まれたという詐欺事件報道の影響は?

 旅行大手のエイチ・アイ・エス(以下HIS)がハウステンボスを売却するという。投資会社などと調整していて、売却額は数百億円になるようだ。

 理由はもちろん、コロナ禍によるHIS本体の業績の落ち込み。4月までの半期で260億円もの最終赤字に落ち込んでいたというから、致し方ない。企業が苦しくなった時、最初は小手先での経営合理化が行われ、次に固定費である人件費でのリストラを行い、それでも間に合わなければ大型資産を売却するしかないからだ。それだけコロナによる旅行業界へのダメージは大きく、同社は追い込まれていたとも言える。

 コロナ以前は、それこそいつ上場するのかとまで言われていた優良子会社だったのだが、こうなってみると思い起こされるのが、HISの澤田秀雄会長とハウステンボスとの間のここ数年間での距離感だ。

「18年に澤田さんが信用する金融業者I氏がリクルート株購入の詐欺話にハマって、その購入資金として澤田さんが50億円を提供していたとして週刊誌ネタとして話題になりました。その金融業者I氏と詐欺グループとされる相手との間で起こされた訴訟は現在も継続中です」(週刊誌記者)

 その澤田氏が提供した50億円は、実はハウステンボスから出ていた。そこでダマされて返って来ないことが分かると、澤田氏はその穴を埋めるために、自身が持つHIS株を売却して補ったとみられている。そしてハウステンボスの社長を19年5月に退任、代表権のない会長に退いた。この時の退任劇も、週刊誌や経済誌では、詐欺事件が理由の1つではないかと囁かれた。

 すると今度はコロナ禍が本体のHISを襲った。そして今年3月に澤田氏は、HISの社長兼会長も退いて、会長とCEOに留まるに至った。

「HISは旅行の1本足打法はいつ倒れてもおかしくないので、電力やホテル事業など多角化を図ってきました。ところが19年に全国で25のホテルを運営、東京を中心に多くの賃貸オフィスを持つ不動産会社のユニゾホールディングスを買収しようとしましたが、ユニゾはみずほフィナンシャル・グループ系という敷居の高さから抵抗に遭って失敗しました。変なホテルは好評なようですが、大々的なホテル事業への進出は果たされないまま、コロナ禍に突入してしまったかっこうです」(同)

 振り返ってみれば、この詐欺事件が大きな蹉跌となったとも言える。

(猫間滋)

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