国内初の新型コロナウイルスの飲み薬として期待されていた塩野義製薬の「ゾコーバ」だが、残念ながら「承認見送り」となった。7月20日、厚生労働省の審議会が開催され、最終段階の治験データを待つ、という結論に至ったからだ。
「ゾコーバは喉の痛みや咳、息切れなどで効果が見られ、BA.4やBA.5の変異株にも効果があるというのが塩野義の説明。今年の5月に創設された『緊急承認』の制度での通過を狙ったもので、アメリカでは2つのメーカーの薬が認められているということもあって、『日本でも!』と期待されていたのですが。『有効性が推定されるという判断はできない』として、『継続審議』ということになりました」(全国紙記者)
というように、「緊急承認」という新しい制度と「国内初の飲み薬」ということでだいぶ注目されていたこの審議会での議論。マスコミは一斉に「承認見送り」「継続審議」と報じてわりと穏やかな論調だが、ネット配信された審議会を見た人からは“さんざんな”中身の報告が。
委員から出た「臨床試験から科学的に有効性を推定することはできない」などという意見は穏健なもので、「救世主にはならない」「医師が利用する場面がどれだけあるのか」「そもそも緊急承認に値しない」と、けんもほろろなバッサリ具合なのだ。
さらには厚労省が招いた参考人3人と塩野義製薬との利害関係までが追及される場面もあって、実際2人がそうだったという悲しき結末も。
思い起こせばこの薬、2月の頭に自民党の甘利明衆院議員が、塩野義製薬から治験報告を受けたとして「日本人対象の治験で副作用は既存薬より極めて少なく効能は他を圧している。外国承認をアリバイに石橋を叩いても渡らない厚労省を督促中だ」などとツイッターに投稿。本来は機密とすべき情報をペラペラとしゃべってしまったので、「インサイダー情報では」とネットやSNSで大炎上した経緯がある。
どのみち早い段階での承認を目論んでいたのだろうが、この横やりが入ったうえ、蓋を開けてみたらやはり見切り発車だったようだ。
(猫間滋)