「中高年向け動画チャンネル」が続々出現/2022下半期「激動のトレンド」大予測

 コロナ禍の巣ごもりで多くの人の行動様式が変わった。家飲みがルーティンになったなどは典型だが、実はネットへの中高年層のアクセスが飛躍的に高まっている。中でもダントツで人気なのがYouTube。新しい楽しみ方を発見したオヤジ世代が、さらなる深みを求めているという。

「YouTubeが中高年層に狙いをつけ始めた下地は、19年くらいからありました。当時、ブログをメインにアフィリエイト広告で稼いでいた人たちが動画に大量進出。それにより、どうすれば稼げるか? といった動画がキッズ動画を駆逐し、ビジネス系へと流れていった。ここらあたりから、すでに中高年層、つまりオヤジ世代の需要の芽はあったのです」

 そう語るのは、ニュースサイト「TABLO(タブロ)」副編集長で、自らも動画配信を手がける岡本タブー郎氏だ。すでにあった下地に火をつけたのが、皮肉にもコロナ疫禍だったという。

「リモートを強いられたオジサンたちは急遽、パソコンやヘッドホンなどが必要になり、購入した。実際、その時期は、そうした商品が品薄になっていましたからね。つまり、彼らにとっては、否が応でもYouTubeを閲覧する環境が整ってしまったわけです(笑)」(前出・岡本氏)

 不本意(?)にもYouTubeと向き合った中高年層が動画のおもしろさを肌で感じ、徐々にハマり始めたというのだ。

「最初にオヤジ世代が注目したのはキャンプやDIYです。キャンプ動画は、すでに芸人のヒロシ(50)でメジャーになっていましたが、変わった点は、関連商品の購買力が若者の視聴者とは比べ物にならないほど格段に上がったことです。この時期は作業服関連用品の最大手『ワークマン』や釣り具の『上州屋』、それに100円ショップの『ダイソー』までもがキャンプ用品に力を入れていましたからね。オヤジ世代の影響力はバカになりません」(前出・岡本氏)

 もっとも、キャンプ動画などのブームは長く続くわけではなく、今年いっぱいでほぼ収束の傾向に。それでは下半期、どのような動画が中高年のハートを掴むのか?

「当たり前ですが、オヤジ世代が欲する動画です。彼らがかつて心をときめかせたアイドル系は特に人気が高いんです。昔の『モーニング娘。』などのハロプロ系がそうですね」(前出・岡本氏)

 確かに97年デビューのモー娘にハマった層は、すでに40代半ばを過ぎており、85年デビューのおニャン子クラブなど80年代のアイドルにハマった層は還暦を過ぎている人もいる、まさにオヤジ世代と重なるのだ。

 もっとも著作権の問題もあり、単にアイドル動画が増えていくわけではない。前出・岡本氏が続ける。

「私事ですが、4月から『ハロプロとおじさん』というチャンネルを立ち上げました。内容はハロープロジェクトが好きなオジサンたちが出てきて、それぞれ熱い思いを語るというだけなのですが(笑)。それでも開始当初からYouTubeに優遇され、再生回数が日に日に上っていき、近いうちに収益化のメドが立ってきた状態です」

 この「YouTubeに優遇される」ということも大きなポイントだ。YouTube側も、より安全で広告がつきやすいコンテンツを求める傾向が高まっている。それだけに、オジサンたちが罪なくアイドルにハマっていく、という動画は大歓迎なのである。

「今はガーシーchのようなゴシップ系が注目されていますが、結局はチャンネルごとBANされる可能性が高い。実はYouTube自体、こういう動画に広告がつくことを嫌っていて、意外にもYouTubeの世界に言論の自由はないのです。そういった意味では、常識的で適度な刺激を求めるオヤジ世代は、YouTubeにとっては歓迎すべき存在です。また、オヤジ世代は動画を見ているうちにオススメ動画などアルゴリズムの〝罠〟により、さらにハマっていく。下半期以降、彼らのような視聴者が増えることは間違いありません」(同)

 中高年に向けた料理系や医療系動画も続々と誕生している中、アイドル関連の動画を見ながら家飲みをする。これもある意味、新世代の登場とも言えるのではないか。

ライフ