高齢化する親世代の8050(はちまるごーまる)問題と合わせて大きな社会問題となっている中高年引きこもり。内閣府が19年に発表した調査結果によると、40~64歳の引きこもりは推計61.3万人で鳥取県の総人口(約55万人)を上回る。
ただし、国や自治体、支援するNPOなども実態を完全に把握できているわけではなく、働きたいとの意思を持つ人もいれば、家から一歩も出られないような深刻な状況の人も少なくない。いずれにしても彼らの社会復帰に向けたサポートが急務なのは言うまでもないが、問題はこれだけではないという。
「健康面です。引きこもりの方は1日の大半を室内で過ごし、運動習慣もありません。同年代の会社員や主婦のように通勤や買い物などで外出することもないため、消費カロリーも少ない。それでいてインスタント食品や菓子類を食べすぎたり、栄養のバランスを考えた食事をとっていません。そのため、生活習慣病のリスクが一般成人よりも高いんです」
そう語るのは、引きこもりの健康相談などのボランティア活動を行ってきた内科医。実際に部屋で倒れていた引きこもりの人が緊急搬送されることも珍しくないという。
「脂質や塩分の過剰摂取などで動脈が詰まっている方もかなり多いと思われます。この場合、脳梗塞や心筋梗塞を招く危険性が高いのですが、彼らは定期的に健康診断を受けることもありません。通常なら検査結果に基づいて我々医師が指摘し、食生活の改善などを心がけますがその機会すらない。だから、本当に我慢できなくなってから病院に来て、そのまま即入院なんてことも多いんです」(前出・医師)
引きこもりの健康状態に関する詳細な統計などはないそうだが、「自覚してないだけで糖尿病になっている人は間違いなく多い」と警鐘を鳴らす。
「多くの自治体では住民向けの無料健康診断を年に一度行っています。血液検査もありますし、ぜひ利用してほしい」(前出・医師)
病気が発覚すれば治療を優先させなければならず、社会復帰どころではなくなる。当人にしてみれば健康にまでなかなか意識が向かないのかもしれないが、何かあってからでは遅いのだ。
(高島昌俊)