異例の酷暑を迎えた日本列島。その熱波にかき消されるかのように、猛威を振るった新型コロナウイルスへの関心が薄れているように見える。しかし現実は真逆で、今、夜の街は国税局が課す莫大な「税金」というコロナの爪痕に戦々恐々としているというのだ。
厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は6月30日、「新規感染者数が全国的に上昇傾向に転じた」として感染拡大局面にある、と発表した。もっとも、度重なる「感染拡大」「感染爆発」などの言葉に慣れてしまった国民には届きにくいのか、昼間はもちろん、いわゆる〝夜の街〟への人流も止まる気配は見られない。
もちろん、景気回復という意味では効果があり、コロナ禍が直撃した夜の街にとっては一安心‥‥といった状況かもしれない。しかし、彼らはコロナ禍とは別の重大問題に頭を悩ませていた。東京・新宿で飲食店を経営する男性がこう溜め息をつく。
「今年の課税金額がハンパな額じゃない。具体的に言えば、住民税や国民健康保険料。昨年までと比べて、倍増とかいうレベルじゃなく増えている。うちの場合、国保の支払いは4〜5倍になってしまった」
健康保険料がいきなり5倍とは尋常な上がり幅ではないが、むろん、これには理由がある。それはコロナ禍で行われた飲食店に対する「協力金」の性質だ。
その前に、まず協力金の内容と経緯について簡単に振り返っておこう。
2020年の3月30日、東京都の小池百合子知事は厚労省新型コロナ対策本部クラスター対策班・西浦博北海道大学大学院教授(当時)とともに緊急記者会見を開き、「感染爆発重大局面」として都民に注意を喚起。特に夜の街への警戒を呼びかけた。
そして、安倍晋三内閣(当時)が東京をはじめ、神奈川や大阪など7都府県に新型コロナ特措法に基づく初めての緊急事態宣言を発出したのが4月7日のことだ。
特に小池都知事の会見で「感染源疑惑」として印象づけられた夜の街のダメージは大きかった。その穴埋め的に、事業者に対して支援金名目で東京都が支払ったのを手始めに、その後、断続的に続く休業要請、時短要請などに合わせて各自治体は「協力金」という名目で事業者支援を始めたのである。ざっとその目安を記すと、安倍内閣から菅義偉内閣へと変わったコロナ禍期間中、1店舗あたり1日3万〜6万円(時期によって異なる)の協力金が支払われていた時期があった。
これには国民、事業者双方から賛否が起き、事業者からは「店舗規模などによっては支給額が売り上げには遠く及ばない」、また事業者以外の国民からは「個人事業者には多すぎではないか?」という疑問も投げかけられるなど、侃々諤々の騒動となったのは記憶に新しいところだ。
*飲食店経営者が青ざめる「コロナ協力金」強制回収が始まった!(2)につづく