セ界に渦巻く「落合監督待望論」は本当か【1】「阪神をぶっ壊す」ぐらいの劇薬

 低迷する球団の立て直しを託せる人材となると、そうはいない。知将・野村克也、闘将・星野仙一亡き後、今の野球界では「オレ流采配」の落合博満の顔が真っ先に浮かぶ。監督歴こそ中日での8年間のみも、「待望論」が後を絶たないのだ。今季もヤクルト独走の中で早くも浮上してきた深層に迫る。

 今年の阪神タイガースは、のっけから怪しいムードに包まれた。指揮官の矢野燿大監督(53)がキャンプイン前日、異例の「今季限りの退任」を表明したかと思えば、いきなりの開幕9連敗。79年のヤクルトを抜いてセ・リーグワースト記録を更新する始末だった。球界関係者が当時のベンチ裏を振り返る。

「一時はセ・リーグの借金を全て背負い、新庄・日本ハムと並んで、『シーズン100敗』とまでささやかれるほど負けが込んでいた。さっそく、一部メディアから矢野監督の『途中解任説』が噴き出し、次期監督に元中日監督の落合博満氏(68)の名が挙がりました」

 落合氏といえば、07年に中日を日本一に導き、4度のリーグ優勝。04年から11年の8年間の在任中にBクラス落ちがないという圧倒的な成績を残した。13年から17年まで中日GMを務めた後も、現場復帰が待たれる野球人の筆頭格である。球界関係者が続ける。

「阪神にしても、過去に野村克也氏(享年84)や星野仙一氏(享年70)などの〝外様監督〟にチーム改革を託した経験を持つ球団です。敗戦に飽き飽きしていたトラ党の中からも、監督交代に諸手を挙げて歓迎する声が聞こえ始めてきたのです」

 ところが、矢野・阪神は6月になると交流戦で息を吹き返し、ダントツの最下位から抜け出すと、状況は一変。在阪スポーツ紙デスクによれば、

「すぐに球団が今季の矢野体制継続を断言しました。当面の危機を回避したことで監督人事もひとまず落ち着き、後任にしても05年にリーグ優勝した岡田彰布元監督(64)が本命視され、登用が既定路線となりつつあります」

 ただ、「落合待望論」は根強く、フロント内で完全消滅したわけではない。先の球界関係者が噂の出所を明かす。

「確実に球団内部から漏れて伝わった情報です。阪神というのは特異な球団で、どれだけ成績が悪くても、甲子園は常に12球団でトップの集客数を誇る。それでも、今季の開幕の躓きによって、『チームを大幅に変えないと、さすがにまずいだろう』と、フロント側に危機感が走った」

 事実、本誌が接触した球団幹部の1人も、声を潜めながら、こうつぶやく。

「中日時代の落合さんは、白井文吾オーナー(94)の後ろ盾があってこそ。フロント側からの提案なんてまったく聞かんし、コントロールできる人材やないことは百も承知や。それでも、『阪神をぶっ壊す』ぐらいの〝劇薬〟でないと、改革の意味はないやろ。球団の体質に疑問を持つ者もおるし、岡田さんに監督を任せたくないと思う派閥もある。いろいろと重なり合って、落合さんの名前が出たんやろな」

 これが事の顛末というわけだ。

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