プーチン大統領ら資産68兆円没収も、ウクライナ復興に「最低100兆円必要」の現実

 壊したものは、壊した相手に責任を取って直してもらう。至極まっとうな意見だ。
 
 ウクライナのシュミハリ首相が4日、スイス南部ルガノで開かれた「ウクライナ復興会議」で演説。ウクライナがロシア侵攻で受けた被害の復興計画に必要な資金の見積もりが「7500億ドル(約101兆7千億円)に上る」として、「甚大な被害の責任は彼らに負わせるべき」との考えから、その資金源として各国が凍結したロシア政府や新興財閥オリガルヒの資産を没収して充当するよう訴えた。

「先月29日に米司法省が発表した報告によれば、ロシアによるウクライナ侵攻以降、米国と同盟国による制裁で凍結したロシアの資金、金融資産は300億ドル(約4兆1000億円)超。ただ、この金額には、高級不動産や豪華ヨットなど、差し押さえられた個人財産分は含まれないため、これらを合わせるともう少し増える。さらに、米、英、日本などで構成される欧州委員会のタスクフォースでは、ロシア中央銀行の資産計3000億ドル(約41兆円)相当を凍結しているので、これらを合計すれば50兆前後。むろん、今後も米欧を中心とする各国による経済的圧力は続くでしょうが、とはいえ100兆円となると、これを全額負わせるのは現状ではかなり厳しい。しかも、戦争が長引けば当然ウクライナの被害総額は増加していくことになり、終戦後の先行きはまったく見えない状態です」(国際情勢に詳しいジャーナリスト)

 さらに凍結、没収した資産を復興資金に充てるためには、法整備の問題もあるという。

 EUのフォンデアライエン欧州委員長は5月下旬、ウクライナ復興のためにEUが凍結した資産を資金源に充てることを提案していたが、

「これはあくまでEUの判断で、米国の同盟国すべてがこの提案に同意しているというわけではありません。加害者責任というのは心情的には理解できますが、各国で法制度上の違いがあり解決すべき課題が多い。それを一つずつクリアしていくためには、まだ時間はかかるはず。実現に向けたハードルは非常に高い」(同)

 米財務省は先月28日、ロシアの防衛産業にかかわる企業など70団体と29人に新たに制裁を科したほかロシア産の金の輸入を禁止したが、CNNの報道によれば、先月30日にもデラウェア州の信託銀行が、ロシアのオリガルヒとのつながりがあるとして資産10億ドル(約1360億円)を凍結されたという。

「イエレン米財務長官は声明で『財務省は制裁を逃れ、不正に得た利益を隠そうとする者を暴いて崩壊させるために、あらゆる手段を使い続ける』と力を込め、『資産隠し』の徹底的な炙り出しを宣言していますが、過去にも経済制裁を受けているロシアは、資産隠しでは百戦錬磨。世界のありとあらゆる国や地域に資産を分散して潜ませていると言われており、見つかって制裁をかけられてはまた隠し…のイタチごっこが続くでしょう」(同)

 はたして、ロシアに大きなツケを払わせることは出来るのだろうか‥‥。

(灯倫太郎)

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