巨大権力「歴代都知事の仕事」を辛口ジャッジ(1)石原氏は好色ぶりを自伝で披露

 今年2月に亡くなった石原慎太郎氏の自伝が話題となっている。「好色だった」若かりし頃の不貞、隠し子のみならず、都知事時代の還暦超え性的行為の破廉恥過去までを記したスキャンダラスな内容なのだ。振り返れば歴代都知事も醜聞には事欠かなかった。その功罪を含め、知事の仕事ぶりを辛口採点する!

〈「自分と妻」の死後の出版のために書かれた自伝〉

 今年2月に89歳で亡くなった元東京都知事・石原慎太郎氏の自伝『「私」という男の生涯』(幻冬舎)が早くも累計10万部のヒットとなっている。冒頭の一文はこの自伝の帯に付されたキャッチコピーだ。

 政治部デスクが解説する。

「自伝には、小樽で育った幼少時代から一橋大での作家デビュー、政治家に転じ、晩年の都知事時代までの生涯を書き記している。中でも、自分の天性の1つを『好色』とし、新劇女優の卵、銀座ホステス、秘書など複数女性との不貞関係も事細かに記している。隠し子の存在や堕胎手術まで緻密に綴っていて、特に衝撃的だったのが都知事時代。つまり石原氏が還暦を優に超えてから45歳年下の女性と性愛に耽溺したことまでを赤裸々に告白しているのです。この本の中身は3月に亡くなった妻・典子さんだけでなく、4人の息子たちにも知らされていなかったといいます」

 石原氏が13年にわたって務めた都知事といえば、年間14兆円というスウェーデンの国家予算をもしのぐ金額を掌握。首長としてはトップ中のトップとも言っていい存在だ。その都知事が、年下女性に入れあげ、情事に耽っていたとなると‥‥都民ならずともアゼンとするだろう。では実際のところ、都知事としての仕事ぶりはどうだったのか。

 石原都政で、2期目のスピーチライターも務めた元都庁人事課長・澤章氏が述懐する。

「確かに石原さんについては悪く言う人は多いかもしれません。しかし、東京都の財政再建には地道に取り組んでいました。労働組合を説得して職員の賃金カット、膨れ上がった都外郭団体などを統廃合、単年度会計の見直しなどで財政再建を押し進めた。一時は、新規採用職員をゼロにしたこともありました」

 99年4月に行われた都知事選では「東京から国を変える」と主張し、米軍の横田基地返還を公約に掲げ当選を果たした。

「横田基地の軍民共用は最終的には尻すぼみとなってしまったが、それでも、首都圏上空に広がる横田空域の一部を獲得するなど一定の効果はあったのではないか。また、羽田空港の国際化には成功しています」(澤氏)

 これ以上に石原都政の最大の功績と称賛されるのが、ディーゼル車の排気ガス規制だ。

「こんなものが粉塵になって飛んでるんだ!」

 99年8月の、記者会見場でペットボトルに入った黒すすを撒き散らすパフォーマンスは強烈だった。

「石原都知事はディーゼル車が排出する有害物質を問題視し、それを除去する装置を付けることを強いた。燃費を安くするためにディーゼル車を商用車として使っていた輸送業界には猛反発を食ったが、それでも都知事は実施した。この政策は当初は都の環境局が仕掛け、それに石原知事が乗り、珍しくうまくいった稀有な例でした」(澤氏)

 石原氏が旗振り役を務めた「ディーゼル規制」は最終的に国を動かし、ディーゼルカーの排ガス基準そのものを厳格化するに至った。

 功もあれば罪もある。都政の財政健全化を掲げた石原氏が赤字補填に都税400億円をつぎ込んだ「新銀行東京」は最大の汚点だ。

 政治評論家の小林吉弥氏は石原都政を見渡してこう評する。

「結果的に排気ガス規制、など、いろいろなチャレンジをしている。もちろん新銀行東京などすべてが成功したわけではないが、自民党とのパイプを使い、ある程度は思い通りできた都知事だったと言える」

 少なくとも石原都政の公約は、選挙後にペリっと剥がせる〝膏薬〟ではなかったようだ。

*巨大権力「歴代都知事の仕事」を辛口ジャッジ(2)につづく

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