対立が鮮明になった「北」と「南」の関係について、半島情勢に詳しいジャーナリストの福田恵介氏が解説する。
「北朝鮮は自分たちの利益にならなければ、どの国のトップであろうと、会うことはありません。国内ではコロナの発熱患者数が累計430万人を超えて喫緊の課題となっていますが、国民の医療改善や経済よりも重視しているのは核・ミサイルの開発。確実にアメリカを攻撃できるものを完成させるため、粛々と続けていくでしょう」
6月初旬には、4月に続いて米韓が合同で軍事演習を行った。これを挑発行為と見なした北朝鮮は「赤化統一」に向けて暴走待ったなしの危険ラインに突入。アメリカも半島有事に備えてグアムの空軍基地に戦略爆撃機「B1-B」を4機配備し、一触即発ムードが漂っていた。
そんな中、6月5日付の「朝鮮日報」に掲載された記事が韓国国内で物議を醸している。ソウルに本部を置く国民大学校のアンドレイ・ランコフ教授がインタビューでこう発言したのだ。
「北朝鮮の核が拳銃であるなら、韓国の最先端の通常兵器は水鉄砲にすぎない」
絶対的な戦力差が指摘される中にあって、北朝鮮にとって目の上のたんこぶはアメリカ軍の存在だろう。北朝鮮の暴発シナリオの「先制攻撃」について、潮氏がこうひもとく。
「基本的に韓国軍の基地や在韓米軍基地を狙いながら、北朝鮮はアメリカと韓国を切り離す戦略に出ることが考えられます。ICBM『火星15』はアメリカの東海岸まで狙える実績をすでに示していますが、ICBM『火星17』は胴体が長くて、先端部分が太い。そこに3発以上の弾頭を搭載できる可能性があります。それにより、例えばニューヨーク、ワシントン、シカゴを狙って着弾させる。仮に北朝鮮が火星17を2つ持っていて運用できれば、6発の弾頭を同時に迎撃するのは難しい。1つでも撃ち漏らせば、大都市に核が落ちてくることになります」
アメリカ本土を狙うという脅し文句が、果たして通じるものなのか。その自信を深めているのが、これまでアメリカは核保有国との戦いに参戦していない点にあった。潮氏が続ける。
「ウクライナ侵攻でも、ロシアに対して及び腰なのは、アメリカを射程に収める核ミサイルを何発も持っているから。核抑止力をタテに北朝鮮が韓国を攻めることは十分にありえます」
北朝鮮の暴発が加速しているのは、近日中に踏み切ると懸念されている7回目の核実験だ。
17年9月に行った6回目の核実験では、ICBM搭載用の水爆実験に「完全に成功した」と発表。次なる実験では、日韓を標的にするため、核弾頭の「小型化」が見込まれるという。
「『戦略核』(爆発威力の大きいもの)は持っているので、次は『戦術核』(威力の小さいもの)の能力向上を試すはず。『戦略核』を韓国で使えば平壌まで放射能の汚染が進むので、それなら出力を小型化した『戦術核』のほうが使い勝手がよく、在韓米軍基地を確実に破壊でき、ソウル近郊だけを無力化するものを目指すでしょう」(潮氏)
前述したように、KN23やKN24に搭載されれば、着弾は免れない。アメリカ軍としては、自国の兵士が多数居住しているところを狙われるリスクを承知で、韓国のために兵士を危険に晒すか、疑問だという。
*金正恩 戦慄の「核暴走」シナリオ【3】につづく