「返礼品換金」サービス停止よりも深刻!ふるさと納税の“最も腹立たしい”問題点

 ふるさと納税を行ったら返礼品でなく20%現金が受け取れる。「キャッシュふる」という名前の、そんな目からウロコのサービスが6月8日に登場したものの、わずか2日後の10日に終了の憂き目にあった。制度の隙間を突いた“あられもなさ”が出る杭となったからだ。

「サービスの登場には、SNSで『来るところまできた』『総務省が黙っていない』といった声が上がっていましたが、10日にはその通りに金子恭之総務大臣が『制度の趣旨から大きく外れている』と苦言を呈すると、提供会社はその日のうちにサービスを停止しました。世間がザワつくのは必至のサービスを行うに当たって、提供会社は当初、弁護士のリーガルチェックを受けていると胸を張っていたものの、さすがに大臣が名指しで不快感を示した逆風は強かったのでしょう」(経済ジャーナリスト)

 そもそもこのサービスは、ふるさと納税を行って返礼品を受け取る人の「受領権」を他者に販売。依頼主には寄付額の20%をキャッシュバックするというもの。総務省はふるさと納税の還元率の上限を30%までとしているので、この差し引き10%が提供会社の利益になると思われる。寄付者、提供会社、受領権購入者の3者のマッチングがあって成立するサービスのため、パチンコやパチスロの「ホール・古物商・賞品流通業者」の3者間での商行為としてギャンブルの規制対象から外れているのに擬して、「3店方式」との声もSNSであった。

 結果、その身も蓋もない現金主義が当初の予想通りお上の反感を買ったわけだが、考えてみれば、ふるさと納税を行った人が受け取った返礼品をフリマで販売して現金に換えるのを、このサービスが代行しただけとも言え、そこにはもともとふるさと納税そのものが抱える問題点を指摘する声もあった。

「ふるさと納税を聞こえよく言えば、居住していない自治体を応援したいとして寄付を行う行為。そして寄付を行った人は居住する地域の住民税が控除されるので、『納税』を謳ってはいても実態は『寄付』であることにそもそもの問題がありました。1つは各自治体が寄付金欲しさに返礼品の豪華さを競ったこと。そしてもう1つは、ふるさと納税で地方の自治体に寄付している人は実際に居住している自治体の住民税が控除されるので、ふるさと納税をしていない人がふるさと納税をしている人の税負担を肩代わりしていることになるという問題です。この問題では、昨年11月に東京の23区長が531億円もの区民税が漏出したとして金子総務大臣に抜本的見直しを求める要望書を提出しました。そういった問題がある制度だということで、やはり昨年の12月には埼玉県・所沢市が返礼を取りやめるということもありました」(同)

 他にも、多額の寄付が行える富裕層に有利な制度との批判もある。10日の「キャッシュふる」のサービス終了から2日後の12日にも、金子大臣は「再発防止」を指示したというが、そもそもそうした複数の矛盾のある制度自体を見直した方が良いのではないだろうか。

(猫間滋)

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